近江の文化・自然が育んだ染めと織り
山口真有香(滋賀県立近代美術館学芸員)
この度、滋賀県立近代美術館では、8月8日(土)〜9月23日(水・祝)の会期で、企画展「志村ふくみ展 ─自然と継承─」を開催します。
近江八幡市出身の紬織の人間国宝・志村ふくみ(1924年〜)は、日本を代表する染織作家です。作品に使われる糸は、さまざまな種類の草や木から引き出された色を用いて、作家の手によって染め上げられます。その取り組みについて作家が「草木の抱く色をいただく」と表現することからも伺えるとおり、自然に対する真摯で純粋な姿勢が常に制作の中心に貫かれていると言うことができるでしょう。自然の恵みを素材に、作家の思いとさまざまな工夫や技法を生かしながら制作された紬織作品は、対峙する鑑賞者に自然の美しさや環境の大切さも語りかけてくれているようです。
本展では、作家が自然との関わりの中で制作を行って来た紬織作品について、滋賀県立近代美術館の所蔵品のなかから、「熨斗目(生絹)」(1981年)、「勾蘭」(1987年)、「水門」(1994年)のほか、1990年代から精力的に制作を進めている「源氏物語」をテーマにした連作や近年の新作など、前・後期合わせて約60点を展示。作家の思想と制作技法の検証、そして近年特に作家が力を入れて取り組んでいる次世代への技術伝承について、作家が自らのルーツとして認識する滋賀の文化・自然との関わりも含めて紹介します。
また、本展の開催期間中には、作家の創作の世界を体感して頂ける織りのワークショップや講演会も実施します。
本展が、作家・志村ふくみとその作品の新しい魅力に出会う機会となりましたら幸いです。
【会期】 2015年8月8日(土)~9月23日(水・祝)
【会場】滋賀県立近代美術館(大津市瀬田南大萱町1740―1)TEL077-543-2111
【休館】 月曜、ただし9月21日(月・祝)開館
【開館】 9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
【料金】 一般1000円 高校生・大学生650円 小学生・中学生450円
【関連リンク】 滋賀県立近代美術館
※今展は前期期間(8月8日〜8月30日)と後期期間(9月1日〜9月23日)で大幅な展示替えを行います。
■講演会「ふたたび「かくれ里」に出会う」 (事前申込制)
【日時】 2015年9月13日(日) 13:30~15:00
【講師】 志村ふくみ氏、志村洋子氏
【会場】 同館講堂 (定員180名)
【料金】 無料
【申込方法】 参加希望人数(4名まで)・代表者氏名・住所・電話番号を明記し、往復ハガキにて、または開催館ホームページより、「志村ふくみ展 講演会」係まで申し込むこと。
※申込締切:8月28日(金) 必着、申込多数の場合は抽選
「新美術新聞」2015年8月1・11日号(第1383号)1面より