日用品などの工業製品、印刷物の廃材を用いたユニークな立体作品を手がけている富田菜摘(1986年東京都生まれ、2009年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業)の個展が現在、名古屋で開催中だ。
富田は主に2つのシリーズの作品を発表している。ひとつは、金属やプラスティックの廃品を素材にした生き物のシリーズ。日常見慣れた工業製品、使い古され捨てられた日用品が、富田の手にかかると、生き生きとした個性のある動物の姿に生まれ変わる。イグアナやカメレオン―それぞれの生き物には名前がつけられおり、身振りも表情も実に愛おしい。素材の絶妙な組み合わせには、作家の類稀な造形感覚が窺える。
もうひとつは、新聞や雑誌のコラージュにより作り上げる人物像のシリーズだ。富田が表現しているのは、現代を生きる老若男女さまざまな人物の典型。それぞれの世代を象徴する印刷物の切り抜きを使って張り子状の人体をつくり、どこかでみたことがあるような―しかし実在しない―人物に仕立てる。印刷物を素材に用いることで、富田の作品はある種の時代性、記録性を帯びる。同時に、雑誌や新聞という素材は、材質という点でも、またそこに印字されている内容という点でも、いずれは褪色していく。それゆえに、このシリーズの作品は、時間が経過し、作家の手を離れたところで、新たな効果が生まれる可能性も内包している。
「さんざん待たせてごめんなさい」(2010年、ギャルリー東京ユマニテ)、「森の木陰でどんじゃらほい」(2010年、GALLERY エクリュの森)など、毎回、観る者をわくわくさせるような作品発表を行ってきた富田。今展では、動物と人物のシリーズより、2007年以降の作品から最新作まで約150点を展覧している。
【会期】 2012年9月24日(月)~10月20日(土)
【会場】 アートギャラリー C・スクエア
(名古屋市昭和区八事本町101-2 中京大学名古屋キャンパス4号館1階)
【開廊時間】 9:00~17:00 【休廊】 日曜
☎052-835-5669 【料金】 無料
<作家によるトークイベント> 9月29日(土)14:30~15:30 聴講無料、予約不要
【関連リンク】 アートギャラリー C・スクエア