信州・上田の「夢の庭画廊」にて、洋画家・石井武夫(1940年千葉県生まれ、独立美術協会会員)の個展が開かれている。
石井は63年に東京教育大学(現・筑波大学)を卒業、68年に独立展初入選。小林賞、野口賞、独立賞と受賞を重ねてきた。紀伊國屋画廊、ギャラリー福山などでの個展と並行し、筑波大学、大阪芸術大学で後進指導に尽力したことが知られる。
夢の庭画廊は、無言館や信濃デッサン館ともほど近い場所に建つ。石井は長女を幼くして亡くしたことがダミー人形のモチーフへとつながった。4歳で迎えた終戦の記憶は創作のひとつの原風景となり、昨年の震災で亡くなった人々の無念さにも思いを馳せる。様々なものへの鎮魂の念は、画廊のあるこの土地とも響きあうことだろう。
個人的な記憶や体験が歴史と交錯し、思索的で複層的な世界観をなすのが画家の魅力。150号、100号の大作を軸にした14点の展観から、時代にも寄りそい深化する、石井の画業を目撃してほしい。
【会期】 10月26日(金)~11月25日(日)
【会場】 夢の庭画廊(長野県上田市前山264―3)
☎0268―38―3236
【休廊】 水・木曜 【料金】 無料
「新美術新聞」2012年11月1日号(第1295号)4面より