ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産条約採択40周年記念最終会合(日本政府主催、ユネスコ世界遺産センター協力)が11月6日から8日まで、国立京都国際会館で開催された。60カ国から多数の参加者が集い世界遺産条約の今後のあり方について議論が行われ「京都ヴィジョン」としてまとめられた。本会議場では2007年同条約採択35周年にパリのユネスコ本部(ミロホール)で個展を行った洋画家・奥谷博氏(1934年生まれ、文化功労者、日本藝術院会員)の「日本の世界遺産」にちなんだ新作など11点が展示され、好評を博した。この機会に前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏に「奥谷博画伯と世界遺産」を寄稿いただいた。
奥谷博画伯と世界遺産
松浦晃一郎(前ユネスコ事務局長)
世界遺産条約がユネスコ総会で採択されたのは1972年で、今年はちょうどその40周年の年にあたります。ユネスコは数多くの文化及び教育に関する条約を採択していますが、その中で国際的にも日本においても一番よく知られているのが世界遺産条約です。現在世界遺産条約に参加している国は190カ国に及び、世界遺産(文化遺産及び自然遺産)の数は962で現在のテンポで世界遺産の数が増えていけば2014年には1000を超えるでしょう。
日本には世界遺産は文化遺産で12、自然遺産で4、合わせて16存在します。今富士山及び鎌倉を文化遺産候補としてユネスコに提案しており、明年の6月カンボジアで開かれる世界遺産委員会で審議される事になっています。ポジティブな結果が出る事を期待しておりますが、そうなると日本における世界遺産は18に増えます。
私がユネスコの事務局長時代2002年が世界遺産条約30周年の年にあたりました。世界各地で世界遺産条約の今後について色々議論するシンポジウムなどを催し、7月にハンガリーの首都ブダペストで開かれた世界遺産委員会では世界遺産条約の今後のありかたについての考え方をとりまとめた「ブダペスト宣言」を採択し、11月にはベニスで30周年行事を開きました。
2006年に奥谷博画伯の作品展をユネスコ本部で開く事ができないかという提案があった時に、私は直ちに賛成しました。奥谷画伯という日本の洋画界トップの方の油絵展をパリにある文化を取り扱う国際機関であるユネスコの本部で開く事は非常に意義があると思ったからです。
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