絹谷幸二・渾身作のドキュメント『祈りのカンバス~無著・世親菩薩への挑戦~』
NHK日曜美術館 2月10日(同17日再放送)で放映
わが国画壇の中心にあって常に美術界のけん引役として活動する絹谷幸二(独立美術協会会員・大阪芸術大学教授・日本藝術院会員)。昨年は、記紀万葉をテーマに出身地の奈良県立美術館と全国髙島屋を巡回する大規模な同時個展を開催、ひろく注目を集めた。
今年1月下旬、古希を迎えた画家はまた新たな挑戦を開始。それは仏像彫刻の最高峰、奈良興福寺の国宝「無著(むちゃく)・世親(せしん)立像」を描く試みだ。
絹谷にとって仏の世界は重要なモチーフ。衝撃を受けた東日本大震災の後には鎮魂の思いを込め多くの仏像を描いた。画家は語る。「数々の彫刻の中で私の心を捉えて放さなかったのが無著と世親の像。この二人が見つめているのは他ならぬこの世の光景です。それは尋常ならざる悲惨です。溢れ出ようとする涙を堪えて言葉にならない叫びが口元にあふれ出しています。私は今もそれを文字にすることはできないが、目に見えない荘重な存在感に打たれるのです」と。
無著・世親は法相宗始祖として崇敬されるインド学僧の兄弟。興福寺所蔵の立像は、天才仏師・運慶円熟期の最高傑作とされる。これまで絹谷は「自分にはまだまだ無著・世親と向き合う力はない」と感じてきた絹谷が、画家としての大きな節目として二人に挑む決意を固めたのだ。正月を返上してカンバスに向かった絹谷が表した日本人への鎮魂と再生の願いのドキュメンタリー番組。
日曜美術館『洋画家 絹谷幸二 祈りのカンバス~無著(むちゃく)・世親(せしん)菩薩への挑戦~』
NHK Eテレ 2013年2月10日(日)9:00~9:45 / 再放送:同2月17日(日)20:00~20:45
【関連リンク】 日曜美術館
新美術新聞2013年2月1日号(第1303号)2面より