(独法)国立美術館、国立文化財機構、日本芸術文化振興会の統合は当面凍結
経済と教育再生を掲げる安倍政権が新方針決める
経済再生と教育改革を最重点施策に掲げる安倍政権は、平成25年1月24日、「平成25年度予算編成の基本方針」の中で、先の「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」(平成24年度1月20日閣議決定)を当面凍結・再検討すると表明した。このため、美術館関係者から懸念が示されていた東京国立近代美術館などの国立美術館、東京国立博物館などの国立文化財機構、日本芸術文化振興会の統合は一旦中断の見通しで、成行きが注目される。
昨年末までの政府方針では、文化振興法人の見直しについて独立行政法人・国立美術館、国立文化財機構及び日本芸術文化振興会は統合して文化振興型の成果目標達成法人とする、とした。
同時に、その文化3法人の制度・運用改善の取組方針案として①3法人を統合する。②美術品購入等のために基金を創設する。③利益剰余金を弾力的に目的積立金に認定できるようにする。④自己収入について専門人材の人件費を含む事業の充実に法人の裁量により柔軟に使用することを可能とする、などとされた。
法人制度および組織移行については平成26年4月の実施が目指された。また統合を行う法人は事務・事業及び組織をそのまま引き継ぐのではなく、同時に整理・合理化を徹底的に行った上で統合する、との措置も出されていた。
(独法)国立美術館とは東京と京都の国立近代美術館2館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館5館のこと。国立文化財機構は東京、京都、奈良及び九州の国立博物館4館、東京と奈良の文化財研究所、アジア太平洋無形文化運営研究センターの7 施設。日本芸術文化振興会は国立劇場本館、同能楽堂や新国立劇場などの6施設、また芸術文化振興基金により助成の交付を行う。
各館や施設のいずれもが日本の文化芸術振興の中核であり、大きな役割を果たしている。
独立行政法人化制度が始まって15年。この間、美術館や博物館の学芸現場などでは、運営費交付金の大幅減のなかでも、職員一人当たり入館者数は健闘するなど様々な努力が積み重ねられてきた。保存・修復などの人材育成も必須だ。ところが、目的積立金の承認は運用面でほとんど認められないのが現状だ。
この一年でも文化振興法人の統合・機能強化策を検討する文部科学省の諮問機関である文化審議会(宮田亮平会長)や文化政策部会の会合では各美術館・博物館等の各諮問委員から活発な意見が出され、真剣な討議が重ねられてきていた経緯がある。
安倍内閣が、今年1月24日閣議決定した「平成25年度予算編成の基本方針」の行財政改革によれば、〈限られた人的・物的資源を有効に活用し、行政機能や政策効果を最大限向上させる真に国民のためになる行財政改革に取り組む〉とし、〈独立行政法人の見直しについては「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」(平成24年度1月20日閣議決定)は、それ以前より決定していた事項を除いて当面凍結し、平成25年度予算は現行の制度・組織等を前提に編成するものとする。特別会計及び独立行政法人の見直しについては、引き続き検討し、改革に取り組む〉とした。
今後、安倍内閣がどういった形で「独法」の改革を進めるかはまだ明らかではないが、教育再生の柱の一環として文化芸術振興に関しては特に積極的な姿勢を示してほしい。
「新美術新聞」2013年3月21日号(第1307号)3面より
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