昭和初頭から戦後にかけて多くの芸術家が移り住み、芸術の街として輝きを放った池袋西口周辺は、「池袋モンパルナス」と呼ばれる。「新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館」は、池袋西口の活性化、まちづくりへの寄与、池袋モンパルナスの精神を現代に引き継ぐことを目的に、毎年様々なイベントを実施している。今年は5月16日(木)から29日(水)までの開催期間中、東京芸術劇場、東武百貨店、画廊で展覧会、商店街でワークショップなどを催すほか、旧江戸川乱歩邸も特別公開する。
東京芸術劇場5階ギャラリー2は、5月19日(日)から6月5日(水)まで「池袋モンパルナス―歯ぎしりのユートピア」展を開催。「池袋モンパルナス」の名付け親で詩人、画家の小熊秀雄を始め、大塚睦、榑松正利、寺田政明、吉井忠、長谷川利行、丸木位里、丸木俊ら、池袋周辺に形成されていたアトリエ村を代表する作家たちの作品を展示する。入場料は無料。
また、来年度からの公募展に先駆けて開催される新企画「回遊 De Art2013」では、アートプロデューサー・北川フラム氏のディレクションにより、磯崎眞理子や桑田朋以、キジマ真紀ら若手作家の作品を東京芸術劇場内のオープンスペースや、駅地下エリア、消防署などに展示。そのほか、東武百貨店美術画廊での特別企画「宮下真理子展」、区内小学校児童の作品約 800点を展示する「まちかど子ども美術展」、エリア内15ギャラリーでの作品展示、さまざまなワークショップや、初の試みである回遊スタンプラリーの開催が予定されている。
1945年4月13日の東京西北部の空襲で豊島区は甚大な被害を受け、戦時中の応召や疎開、戦後の混乱によりアトリエを去る作家は多く、池袋周辺は変化を余儀なくされた。今日では現代的な建築物が立ちならぶ池袋の街だが、本イベントを通じて、芸術家たちが集い、コーヒーや安酒を片手に議論し、喧嘩し、友情を育みながらそれぞれの制作に情熱をかたむけた「池袋モンパルナス」の時代に思いを馳せてみてほしい。
【関連リンク】 第8回新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館
「新美術新聞」2013年5月1・11日合併号(第1311号)3面より