【レポート】 「富士山」世界遺産一覧表への登録 決定

2013年07月20日 17:27 カテゴリ:最新のニュース

三保松原も逆転 登録

近藤文化庁長官ら 現地での強い活動が功を奏す

 

世界文化遺産登録となった富士山、山中湖畔にて(2013年6月29日) 撮影:本庄俊男

世界文化遺産登録となった富士山、山中湖畔にて(2013年6月29日) 撮影:本庄俊男

文化庁は、カンボジアの首都プノンペンで開催された第37回ユネスコ世界遺産委員会において、日本が世界文化遺産に推薦していた「富士山」について審議が行われ、6月22日午後(日本時間17時28分)、世界遺産一覧表に三保松原を含めて「記載」が決定したと発表した。正式名称は「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」。除外とされた三保松原も一転、登録となった。近藤誠一文化庁長官らが早くに同地入りし、積極的な外交活動を展開したことが大きい。(肩書は当時のもの)

 

 

これにより日本の世界遺産は2011(平成23)年登録の平泉(文化遺産、岩手県)と小笠原諸島(自然遺産、東京都)に続き17件目(文化遺産13件、自然遺産4件)となった。

 

富士山の所在地は山梨県・静岡県。共同推薦省庁は文化庁、環境省及び林野庁。推薦についての概要説明で「山岳に対する信仰の在り方や、海外に影響を与えた19世紀後半の葛飾北斎、歌川広重などによる顕著な普遍的価値を持つ浮世絵などの日本独特の芸術文化を育んだ山である。時代を超えて一国の文化の諸相とも極めて深い関連性を示し、山に対する信仰の文化的伝統を表すのみならず、世界的『名山』としての景観の顕著な事例」とした。

 

富士山の構成資産は、山頂の信仰遺跡群はじめ山中湖、河口湖等の富士五湖、忍野八海、人穴富士講遺跡、白糸の滝、三保松原など25ある。

 

今年4月、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」は、三保松原が富士山から45キロ離れていることを理由に、同地を除外する条件付で登録を勧告した。

 

一時期は「除外止む無し」の空気もただよったが、文化庁は三保松原をふくむ一括登録を確信してプノンペンに臨んだ。近藤長官ら政府代表団は、世界遺産登録を審議する委員会の各国に三保松原の重要性を強く説明した、という。その懸命な活動が功を奏し、逆転登録となったものだ。近藤長官にはユネスコ日本政府代表部大使時代に「石見銀山」(07年、文化遺産・島根県)逆転登録の経験もあった。帰国後、ある会合で殊勲の声をかけられた近藤長官は、「私はリレーでたまたま最後のバトンタッチを受けたランナーの一人です。皆様と共に一括登録になったことを喜びたい」と控えめに感想を語り、万雷の祝福拍手を受けた。

 

「新美術新聞」2013年7月11日号(第1317号)3面より

 


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