『ラッセンとは何だったのか? 消費とアートを越えた「先」』
原田裕規・編著
フィルムアート社 刊 (2013/06)
定価(本体2,200円+税)
国内で最も名を知られ、最も「売れる」画家のひとり、クリスチャン・ラッセン(1956年3月11日生まれ)。多くの人が脳裏に浮かぶスーパーリアリズム的手法によるイルカたちの海景は、つとに「現代美術」の領域では語られず避けられ、図柄や販売方法などのみが嘲笑されてきたのはなぜか。
昨年8月、大きな反響を呼んだ「ラッセン展」(CASHI、東京・馬喰町)も端緒となった本書は、ラッセンを巡る諸問題を見つめ直し、美術作品として構図やモチーフの分析、とくに日本人の受容(愛情も侮蔑も)を15名の筆者が分析した批評集。いわゆる「ヤンキー文化」との類縁性など刺激的な視点が散見される。初の本格的ラッセン論であり、ラッセンを通した“日本美術論”。帯のコピー、「日本の『欲望』を見つめる」とは秀逸。本書には不在のラッセン本人は、数々の言説をどう思うのだろうか。
執筆者 : 斎藤環、北澤憲昭、大野左紀子、千葉雅也、大山エンリコイサム、上田和彦、星野太、中ザワヒデキ、暮沢剛巳、土屋誠一、河原啓子、加島卓、櫻井拓、石岡良治、原田裕規
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