【人事】 文化庁長官に青柳正規氏が就任 =7月8日=

2013年07月31日 18:44 カテゴリ:最新のニュース

 

民間人として5人目 柔軟な思考と発想力

これまで次々と課題解決の実績 その実現力に期待

 

第21代文化庁長官に国立西洋美術館館長である青柳正規氏が就任した(7月8日付)。官僚以外で民間からの登用は5人目。独立行政法人国立美術館理事長の任期を3年7ヵ月余残しての就任で急な形での登板となる。青柳氏は少し前に親しい友人、知人らと日本の伝統工芸美術を海外に強くアピールする為の財団を立ち上げた。前からの「財団立ち上げ」取材の件で、7月4日、国立西洋美術館館長室を訪ね、短時間ながら話を聞いた。

 

 

青柳正規氏

青柳正規氏

青柳氏は7月7日(日)まで国立西洋美術館館長を務めた。同時に国立美術館理事長のほかに文化庁文化審議会委員・部長代理、文化政策部会部長代理、美術品補償制度部会長、「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」座長などの公職は全て辞した。

 

これまでの活動実績の評価は非常に高い。6月まで3期6年つとめた全国美術館会議会長在任中に、関係者にとって長年の悲願だった美術品補償制度を一気に法律として成立させ、「東日本大震災復興チャリティ・オークション 今日の美術展」を全国美術商連合会、日本美術家連盟と連携して実施、1億2千万円余の復興支援金を生んだ。青柳氏の人脈、行動力がなければ実現しなかった。最近ではデザイナー・三宅一生氏と組み「国立デザイン美術館をつくる会」の設立を実現、若手作家らを巻き込んだ活動は大きな話題となった。あるいは現代アート『高橋コレクション』の海外への紹介構想、「障害者の芸術活動支援」など。これらは青柳氏の柔軟な感性、思考、行動力がなければ生み出しえなかった。

 

最新の見逃せない動きが財団法人「国際日本工芸振興会」(本部・東京、広瀬春子代表)の立ち上げだ。青柳氏はいう。「十数年前の『ヴィクトリア&アルバート美術館』が改装オープンしたとき、そこで一番素晴らしいと感じたのはルイ王朝や歴代中国王朝の衣裳でもなく、日本の能衣裳でした。また4年前の大英博のグレートコートで開かれた『日本の現代工芸展』の存在感ある内容を見たとき、もっと日本は海外にうって出なければと感じました。ただ日本のアピール力は非常に弱い。もっと戦略的に展開する良い方法があります。陶芸や漆・染織・金工など、そのキーワードのクオリティの高さ、これは世界に通用する。とりあえず財団を立ち上げましたが、各方面の支援、また作家の方々のご協力が不可欠です。クール・ジャパン戦略とも大いに関わる重要なことです」。長官職には全力投球して取り組む覚悟だ。

 

青柳 正規 (あおやぎ・まさのり)

1944年大連生まれ。ギリシア・ローマ考古学者。67年東京大学文学部美術史学科卒業。

69~72年ローマ大学文学部古典考古学科留学。全国美術館会議会長、独立行政法人国立美術館理事長、国立西洋美術館館長を経る。文学博士。日本学士院会員。東京大学名誉教授。著書は、『皇帝たちの都ローマ』『トリマルキオの饗宴』(共に中公新書)、『ポンペイの遺産』(小学館)など多数。

 

「新美術新聞」2013年7月21日号(第1318号)3面より

 

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