青木野枝氏の屋外大型彫刻が完成、新たなシンボルに
レオナール・フジタの未発表作品「グロテスク」など初公開
ポーラ美術館(神奈川県・箱根)では国立西洋美術館との共同企画「モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」展が開催中(~11月24日)だが、展覧会と同時に2つの話題が大きな評判だ。
一つは彫刻家・青木野枝氏(1958年生まれ、東京都出身)による高さ4メートル、直径5メートルの屋外大型彫刻「雲谷/仙石原」(もや/せんごくはら)をポーラ美術館の敷地内に同美術館のコンセプト『箱根の自然と美術との共生』を象徴する新しいシンボルとして常設し、一般公開していることだ。
青木氏は現代日本を代表する彫刻家。鉄を主たる素材としながら大気中の水の循環に代表される、見えないものの流れや移ろいの表現に取組み続けている。
「雲谷/仙石原」は計51個の鋼材で構成され、雄大な空と豊かな森の間を媒介するかのように柔らかくもしなやかに佇む。青木氏の鋭い感性をこれまで以上にダイナミックに表現した意欲作だ。設置場所は美術館エントランスから展示室へ入場する際に国立公園の豊かな自然林を背景に臨みながら鑑賞できる地点だ。青木氏は、今回の作品設置について「自分が表現したいことを実現する上で理想の所。仙石原が雨や濃霧などの気候が多いことも自分が主題にしてきた要素を表現する場として合致します」と語る。
もう一つの話題は、同美術館がレオナール・フジタ(藤田嗣治、1886~1968)の最初期の作品と今まで明らかにされてこなかった戦後のフジタ芸術を紐解く未発表作品2点を新たに収蔵したことだ。新収蔵作品は「キュビスム風静物」、「シレーヌ」、「グロテスク」の3点で、最も有名なエコール・ド・パリの時代の乳白色の表現や晩年の少女や子どもを描いた作品とは異なる、フジタの画業の新側面を紹介するものだ。
このうち「キュビスム風静物」は、フジタがエコール・ド・パリの画家として乳白色の肌の表現で名声を博す前の最初期の作品で、若きフジタが当時の西洋における前衛的な美術の潮流に身をおき、新たな表現を吸収しようとする意欲が強く感じられるという。
「シレーヌ」、「グロテスク」はフジタが興味を抱いていた寓話や神話の中の幻想的なモチーフを描いた作品。特に「グロテスク」は1950年代の前半に幾度か訪れたスペインの影響も垣間見える稀少な作品とされる。
この2点は戦後のフジタの主要なテーマであった子どもや少女を描いた作品とは異なる、今まで十分には紹介されてこなかったフジタ芸術の側面に光をあてるものといえる、と同美術館では説明する。2点とも未発表作品でポーラ美術館で世界初公開となる。
ポーラ美術館
【住所】 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)☎0460-84-2111
【休館】 無休 【開館時間】 9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
【料金】 大人1800円 シニア割引(65歳以上)1600円 大学・高校生1300円 中学・小学生700円(土曜日無料) 障害者手帳をお持ちのご本人及び付添者(1名様まで)1000円
【関連リンク】 ポーラ美術館
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「新美術新聞」2013年8月1・11日号(第1319号)3面より