美術から2人 白磁 前田昭博氏、蒟醤 山下義人氏
文化審議会(宮田亮平会長)は、7月19日重要無形文化財保持者(人間国宝)に、美術工芸分野から陶芸作家で白磁の前田昭博氏(59歳、鳥取県在住)、漆芸作家で技法「蒟醤」の山下義人氏(61歳、香川県在住)の2氏を、他に清元三味線の清元梅吉氏、長唄三味線の今藤清太郎氏の4氏を認定するよう文部科学大臣に答申した。10月に答申通り認定される。
前田昭博氏は昭和29年生まれ。昭和52年大阪芸術大学卒業後、郷里に築窯し独立して作陶に専念。以来、白磁の制作技法や表現を独自に研究し続け、活発な創作活動を展開しながら技を練磨し今日に至る。平成19年紫綬褒章、同24年日本工芸会常任理事、現在に至る。
代表的な制作技法は、天草産の陶石を原料とし轆轤成形で壷などの器を造形した後、土がまだ乾燥する前に、器の表面から手指によって圧力を加え、面取りや、捻れ状の動きのある凹凸を器面に施し、光沢を抑えた半透明の釉薬を施して焼成、白一色に深みのある陰影を与えて完成させる。その作風は伝統的な技法を踏まえつつ豊かな芸術性を備え、かつ現代感覚に溢れる。「白磁」は平成7年、無形重要文化財に指定され現在、保持者として井上萬二氏が認定されている。
山下義人氏は、昭和26年生まれ。香川県立高松工芸高等学校及び同県漆芸研究所で蒟醤など漆芸技法を幅広く習得後、磯井正美氏に師事、さらに田口善次郎氏に師事して蒔絵を学んだ。昭和52年日本伝統工芸展初入選。同55年日本工芸会正会員(現在に至る)。平成19年紫綬褒章。同23年日本伝統工芸展日本工芸会保持者賞、同24年伝統文化ポーラ賞優秀賞。
その技法上の特色は『面彫り』にある。幅広い掘りと色埋めを丹念に繰り返し、濃い色から淡い色に至る数十色に色漆を塗り重ねて緻密なグラデーションを表現する。これらを駆使し自然界に着想を得た個性的な作品を制作。自然の微妙な生動を詩情豊かに表現するもので現代感覚に溢れ、芸術的にも優れたものである、とされた。「蒟醤」は、現在、保持者に磯井正美(点彫り)、太田儔(布目彫り)が認定されている。
今回の答申で人間国宝は計113人になる。
「新美術新聞」 2013年8月21日号(第1320号)3面より