【レポート】 独立行政法人 国立美術館と国立文化財機構 統合されず

2014年03月04日 10:11 カテゴリ:最新のニュース

 

運営費交付金の運用緩和等 平成26年度から改善の方向へ

 

文化関係に関する独立行政法人の見直しの問題は、安倍政権になってほぼ1年がかりで検討されてきたが、昨年末に「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」の閣議決定がなされ、(独法)国立文化財機構と国立美術館、また日本芸術文化振興会(芸文振)を含めた法人の統合は見送られ、それぞれ中期目標管理型法人として存続することになった。

 

各法人は自己収入を増加し、施設の貸出し、デジタル画像の活用等を進め、開館時間の延長、会員制度の拡充、展覧会関連物品の販売促進などの工夫・努力を行う、等の措置を講ずべきとした。

 

美術館関係者の間で国立文化財機構(東博・京博等4館と3文化財研究所など)と国立美術館(東近美・国立新美術館など5館)統合の行方が憂慮されていた。「使命と役割の異なる組織の統合は好ましくない。むしろ、それぞれの組織を拡充し、本来果たすべきナショナルセンターとしての機能を十分に発揮できるようにすべきである。また、もはや統合による合理化の余地が無い」等の声も上がっていたからだ。

 

佐々木丞平・国立文化財機構理事長によれば「毎年運営費交付金が削減され、かつ自己収入目標額が上昇という、機構としては大変苦しい運営を強いられ、自己収入目標額を超える収入があってもほとんどそれが使えない状況が続いている」として、「今回の見直しで取り敢えず平成26年度はこれらが緩和され、自己収入目標額も据え置きとなる見込み。利益の処分でも、これまでほとんど経営努力が認定されず国庫に納付されていたが、その認定基準要件が幾分改善され、収入目標を超えたものを新規の利益と認める方針が示されている」と評価する。今まで要望してきた点がある程度認められ、幾分改善される方向に向かいつつあると言えよう。

 

しかし、佐々木氏は「独法の理念はあくまで『質の高い行政サービスの提供』と『効果的かつ効率的な運営』。つまり不必要なものはカットし、収益を上げていく。収益を上げることが結局は国の負担を少しでも軽減することに繋がり、かつそれが運営にも生かされる、まさに善循環になる。運営費交付金が国民から納められた税金を財源にしていることを踏まえ、国民の目線に立ってサービス等の業務の質の向上を図ることを心がけていきたい」と今後を見据える。

 

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「新美術新聞」2014年3月1日号(第1336号)7面より

 


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