山下耕平「にんじん」　2013年　79.5×57.0ｍｍ　パネル･アクリル･カラーインク

35歳以下の若手画家を顕彰し、具象絵画の可能性拡大を目的に掲げる「絹谷幸二賞」の第6回受賞者が決まり、主催者である毎日新聞社より発表された。本賞である絹谷幸二賞には山下耕平氏(1984年10月、兵庫県生まれ、29歳、福岡県筑紫野市在住)、同奨励賞には寺林武洋氏(1981年10月、富山県生まれ、広島市在住)が決まった。ここ2年女性受賞者がダブルで続いていたが、3年ぶりの男性受賞となった。受賞者には賞状と賞金(本賞に100万円、奨励賞に50万円)が贈られる。

同賞は現代日本を代表する画家のひとりで日本藝術院会員・独立美術協会会員として活躍する絹谷幸二氏(東京藝大名誉教授、大阪芸大教授)が、08年に「これからの若い画家を少しでも励ましたい」と毎日新聞社に提案、その意志を受けて創設された。絹谷氏はかつて洋画壇の登竜門とされた安井賞展(96年度で終了)で大賞を受賞、その励ましから後の画家人生に大きな力を得たという自らの体験が賞創設の元にある。同氏が資金を提供(ただし賞審査等には一切関わらない)、毎日新聞社が主催し、三井物産が協賛に加わる。

主催者発表によると、賞の資格は当該年(第6回は2013年) 12月末日で35歳以下の画家であること。同年、国内で開かれた公の展覧会に発表した作品群の成果が授賞の対象となった。国籍は問わない。今年度の選考委員は山下裕二（明治学院大学教授）、原久子（大阪電気通信大学教授・アートプロデューサー）、鴻池朋子(美術家)の3氏。

賞の選考は、毎日新聞社が全国の美術館学芸員や評論家、ジャーナリストら50人に推薦を依頼。そのうち22人から回答があった。推薦された候補者は23歳から35歳までの22人で男性10人、女性12人だった。候補者からのポートフォリオを選考委員3人が精査した一次選考、そして数を絞り込み作家の自宅やアトリエでの実作品チェックなどの2次選考を経て論議を重ね、最終的に受賞者が決定した。

絹谷幸二賞　山下耕平氏　 ※毎日新聞社提供

絹谷幸二賞を受けた山下耕平氏は、次の展覧会の成果が授賞対象となった。

山下耕平展(13年6月、福岡・ギャラリーとわーる、同年7~8月、東京・銀座ギャラリー58)。同氏は佐賀大学文化教育学部美術・工芸過程デザイン専攻卒業。主な展覧会歴として、VOCA展2011(上野の森美術館)、九州アート全員集合展(12年、熊本市現代美術館)。受賞に佐賀県展佐賀県教育造形教育研究会賞。12年度、佐久市立近代美術館・油井一二記念館に作品収蔵。同氏は、ギャラリー58(6/23～28)とギャラリーとわーる(9/16～28)で個展を予定。

奨励賞の寺林武洋氏は次の展覧会が授賞対象。

「寺林武洋展―LIFEⅡ―」(13年6~7月、Yoshimi Arts、大阪)。同氏は長岡造形大学造形学部視覚デザインコース卒業。広島市立大学大学院芸術学研究科絵画(油絵)専攻修了。展覧会歴に、個展「寺林武洋展―LIFE―」(11年、Yoshimi Arts)、グループ展に「美は細部に宿る」(11年、日本橋髙島屋)など。受賞に白日会展白日賞(06年、東京都美術館、同会は11年に退会)。

(左)：寺林武洋「箱」2013年 130.3×130.3cm 油彩･白亜地･パネル（C)Takehiro Terabayashi　 Courtesy of Yoshimi Arts
(右)：奨励賞　寺林武洋氏

賞の贈呈式は3月13日、東京千代田区の学士会館で行われる。

◆第6回絹谷幸二賞の推薦作家は以下の通り。(受賞者2人を含む)

岩名泰岳、薄久保香、遠藤夏香、大川心平、大塚玲美、大野智史、小田志保、川口洋子、斎悠記、佐藤翠、設楽陸、白石顕子、田中武、千葉正也、寺林武洋、彦坂敏昭、平川恒太、松井えり菜、宮本佳美、毛利そよ香、森田加奈子、山下耕平

◆回答した推薦者

翁長直樹、加藤義夫、岸桂子、児島やよい、渋沢和彦、清水有香、高階秀爾、竹口浩司、中井康之、名古屋覚、西澤美子、野地耕一郎、拝戸雅彦、林洋子、土方明司、藤田一人、保坂健二朗、三井知行、村田真、山口裕美、山本淳夫、和田浩一

(人名は50音順、敬称略)

「新美術新聞」2014年3月11日号(第1338号)3面より