【教育・研究】 第10回日本美術史に関する国際大学院生会議(JAWS10)、東京藝大で8月開催

2012年08月03日 18:08 カテゴリ:最新のニュース

 

第10回「日本美術史に関する国際大学院生会議」(JAWS10)が8月16日から11日間、東京藝術大学で28名の研究者が参加して開かれる。同会議は次世代を担う研究者の育成とその国際交流促進を目的に興され、1987年の第1回以来25年、これまで9回日本と欧米において開催され、今回日本では10年ぶり区切りの開催となる。
若手研究者間の小さな研究・交流の場だが会議の意義は大きい。事務局幹事を務める古田亮・東京藝大大学美術館准教授に話を聞いた。

 

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「日本美術史に関する国際大学院生会議」はJapan Art History Workshopと英訳され、略称(JAWS・ジョーズ)という。その経緯は、第1回の事務局・受け入れ機関の東京大学(参加者35名)から始まり、第2回米国ロサンゼルス・心遠館(1988年、同16名)、第3回上智大学(90年、同29名)、第4回米国コロンビア大学(92年、同23名)、第5回学習院大学(96年、35 名)、第6回米国プリンストン大学(98年、同21名)、第7回慶應義塾大学(2002年、同24名)、第8回イギリス・セインズベリー日本藝術研究所(06年、同27名)、第9回米国シアトル美術館(07年、同21名)。第7回までは日本とアメリカ交互で、最近2回は海外で開かれている。昨年あった「日米文化教育交流会議」の美術専門家会合で検討され、その意義を鑑みて「JAWS」再開が決まりこのほど5年ぶり、日本では第7回以来の開催に至ったという。

 
 「JAWS10」の準備に奔走する古田・准教授は「“ジョーズ”は固定した事務局によって維持運営してきたものではありません。毎回、各国開催地の事務局・受入機関が交代しながら開催するかたちをとり、今回は東京藝大が主催・実行委員会の当番となり、私と佐藤道信さんが幹事役を務めています。東京に集合し、オリエンテーションから始まり、メインとなる3~4日間の研究発表、奈良へ移動して藝大・奈良古美術研究施設を拠点として各施設や寺社の見学など11日間の日程がきっちり組まれ(8月16日~26日)、学生の自主的な活動も重視しています。当初、参加する若手研究者は、この会を立上げられた辻惟雄先生はじめ河野元昭、小林忠、河合正朝の重鎮の先生方の口コミ、人脈からの声掛けで集められ、選抜されたようです。回を重ねる度に、海外からの参加者はアメリカからヨーロッパに広がり、さらに近年はアジアからも参加希望者が増えています。第1回から25年近く経過すると参加者たちの中から今や日本美術の研究者として第一線で活躍する方もたくさんいらっしゃいます。内外における日本美術史研究と人材の育成及び交流に果たした役割は極めて大きいといえるでしょう。JAWS10は初めて文化庁からの補助を受けましたが、まさに区切りの総括的な意味もあります」と説明する。

 
 

一方、毎回手作り方式ゆえに様々な関係経費をどうつくるかという問題が常にある。今回の助成は石橋財団、鹿島美術財団、平和中島財団の3財団法人から受け、特に文化庁による「ミュージアム活性化支援事業」の助成支援を受けられたことが重要だろう。参加者は国外(アメリカ、イギリス、スイス、オーストラリア)の大学から11名。国内大学から17名で、男性6名、女性22名の内訳、応募37名から選ばれた新進気鋭の日本美術史研究者たちだ。
 

節目となる第10回ということで、過去のJAWSに参加し、現在活躍中の2人による公開記念講演会(8月17日、東京藝術大学)がある。山下裕二・明治学院大学教授「第1回JAWSの想いでと、その後の日本美術をとりまく状況の変化について」とロシナ・バックランド・スコットランド国立博物館学芸員「第7回JAWSと西洋における日本美術史について」(定員は先着50名)。さらに近藤誠一・文化庁長官、宮田亮平・東京藝大学長の出席・挨拶も予定されている。

 
JAWSに当初から深く関わる一人で、今回も顧問委員を務める辻惟雄・東大名誉教授は「始めて25年、10回の節目を迎えますが毎回、運営資金難の中でよく続いてきたな、と思います。当番大学や関係者の皆さんの努力のお陰です。世界には日本美術をひとりでコツコツ研究している方もいる。元々、限られた人数でしかできない手作りの会なのですが、学会のミニ版ではなく、集まって親しくがやがやと交流しながら研究を深める同窓会みたいなかたちなら本来良いではないでしょうか」と語った。

 

「新美術新聞」2012年8月1・11日合併号(第1287号)3面より

 


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