【レポート】 「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015」第2回記者会見開かれる

2014年04月04日 20:00 カテゴリ:最新のニュース

 

2015年3月より開催される「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015」(以下PARASOPHIA)の第2回記者会見が京都市美術館で開かれ、第1弾となる参加アーティストがアーティスティックディレクター・河本信治氏によって発表された。

 

今回明らかになったのは予定されている全40名のうち2割に当たる8名、蔡國強、ヘフナー/ザックス、石橋義正、ピピロッティ・リスト、ウィリアム・ケントリッジ、スーザン・フィリップス、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、やなぎみわの各氏。

 

蔡國強「農民ダ・ヴィンチ」 2013 サンパウロ、ブラジル銀行文化センター屋外での展示風景
Photo by Joana França

 

蔡國強氏は1957年中国生まれ。北京オリンピック開会式の花火演出や火薬で描く「火薬絵画」などで知られる。1999年ベネチア・ビエンナーレで金獅子賞受賞、2012年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞するなどニューヨークを拠点として世界的に活躍している。今回PARASOPHIAでは十年近く継続しているプロジェクト「農民ダ・ヴィンチ」の一部を核とした作品を発表。また子どもが参加できるワークショップも計画中だという。

 

ヘフナー/ザックスはフランツ・ヘフナー(1970年ドイツ生まれ)とハリー・ザックス(1974年ドイツ生まれ)によるベルリンを拠点に活動しているユニット。都市環境下の建築と居住の問題をユーモアを盛り込んだ美術的手法によりプロジェクト、パフォーマンスとして作品化している。PARASOPHIAでは京都での長期滞在と都市調査に基づくプロジェクトが構想されている。

 

また京都在住の石橋義正氏(1968年京都府生まれ)は美術、音楽、映像が融合するグループ「キュピキュピ」を主宰。1999年に京都国立近代美術館で開催の「身体の夢」に出品以降、世界各地の美術館や国際展に招待されている。

 

Pipilotti Rist, Mercy Garden Retour Skin, 2014. Audio video installation (photograph inspired by Yuji). Courtesy of the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine.

 

ピピロッティ・リスト氏(1962年スイス生まれ)は「Ever is Over All」で第47回ベネチア・ビエンナーレ(97年)若手作家優秀賞を受賞。近年家具や日用品アなどを取り込む大型のビデオインスタレーションを制作し、色彩と生活の豊かさを謳歌するような作品を発表している。ヨコハマ国際映像祭2009で初の長編映画「PEPPERMINTA」がアジアで初めて上映された。

 

William Kentridge, NO, IT IS, 2012. Photo by Cathy Carver, courtesy of Marian Goodman Gallery, New York. © William Kentridge

 

「動くドローイング」と呼ばれる素描をコマ撮りした手書きアニメーション・フィルムで世界的に知られるウィリアム・ケントリッジ氏(1955年南アフリカ共和国生まれ)は日本では2009~10年に京都国立近代美術館ほか2都市で大規模な個展を開催、10年には京都賞を受賞するなど京都との関係が深い。またドクメンタ13(12年)に出品されたビデオ・インスタレーション「時間の抵抗」は同芸術祭プレイベントとして今年2月~3月に京都市の元・立誠小学校講堂で展示され、大きな話題を呼んだ。

 

サウンドインスタレーションまたは音を素材とし、時間と空間を分節する彫刻を制作するスーザン・フィリップス(1965年イギリス生まれ)。2007年にミュンスター彫刻プロジェクト、12年にはドクメンタ13に参加。また10年にはターナー賞を受賞している。

 

ドミニク・ゴンザレス=フォルステル氏(1965年フランス生まれ)は自身が「ルーム」と呼ぶ一連の部屋のインスタレーションを制作。映像、光、音、家具などが組み合わさり、室内を物語りに満ちた本であるかのような空間に変容させる。昨年9月のオープンリサーチプログラム03として実演された「M.2062(Scarlett)」は氏のPARASOPHIAのための最新の習作だった。

 

やなぎみわ演劇プロジェクト『1924 人間機械』 2012

 

やなぎみわ氏(1967年兵庫県生まれ)は現代社会に生きる女性を扱った作品で90年代半ばから注目を集める作家。近年では演劇的志向の強い作品を発表しており、今年8月1日より開催されるヨコハマトリエンナーレ2014にも参加。同トリエンナーレでは中上健次の「日輪の翼」を舞台化する移動舞台車を発表するが、PARASOPHIAではその移動舞台車を引継ぎ、移動演劇の実現を目指す。

 

また今回特徴的なプロジェクトとして発表されたのが「テクニカルサポート」。これは京都を拠点に活躍を続ける現代美術家・ヤノベケンジ氏率いる「京都造形芸術大学ウルトラファクトリー」と現代美術家・名和晃平氏が主宰する「SANDWICH」が、同芸術祭参加アーティストの作品制作をサポートするというもの。トップレベルの現代美術工房が作品やプロジェクトの実現に協力し、人材や場所の提供という京都ならではの手厚いケアを行う。

 

4本日の記者会見では京都ビエンナーレ2003のディレクターを務めた吉岡洋氏(京都大学大学院文学研究科美学美術史学教授)も登壇し。オフィシャルマガジンとして刊行される「パラ人」を紹介した。同誌は吉岡氏のもと学生がボランティアとして制作・編集に携わり、本番に向けて4回の発行を予定、5回目はPARASOPHIA開始時期に合わせて発行し、プログラム冊子として制作されるという。河本氏は同誌に関連して「将来的に国際展を運営していける若い人材を育てたい。また大学に関わってもらうことで、大学の正規プログラムの中にPARASOPHIAを組み込んでもらいたいという想いもある」とした。

 

会見の最後にはPARASOPHIA プロフェッショナルアドバイザリーボードを務める英テート・モダン館長のクリス・デルコン氏もゲストとして登壇。同芸術祭を新たなる国際展のモデルとし新しい経済的モデルの必要性、新しい官民協力の形を創り出す必要性を説いた。また「PARASOPHIAは常に現在進行形なものとして前に進むことが重要。縦型ではなく水平的に展開することは将来的な美術館像にも繋がる」とした。さらに現代美術そのものについて「常にいろいろなものを送り出し、一貫してイノベーションを生み出すもの。現代美術にはその力がある。あらゆるものを取り込み、発信するのが現代美術であるならそれがクラフトであれダンスであれ実現可能」と述べ、「文化的参加は現代美術においてだけ重要なのではない。それは福祉や教育といった分野においても重要なのであり、アートへの参加によってハッピーになれる。アートそのものが“生活”に密接に関係する」と語った。

 

最後に河本氏は残りの参加作家について「9月末に残りの7割を発表するつもり。しかし最後の1割は直前まで謎のままにしておきたい。そして開始と同時に次に向けて動き出したい」と将来像を述べた。

 

PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015

【会期】 2015年3月7日(土)~5月10日(日)

【会場】 京都市美術館、京都府京都文化博物館ほか府・市関連施設など

【関連リンク】 PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015

 

 


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