文部科学大臣賞(美術)に 大竹伸朗氏と福田美蘭氏
同新人賞に 米田知子氏(美術) 五十嵐太郎氏(芸術振興) 佐藤志乃氏(評論等)
文化庁は3月13日、美術・音楽など芸術11部門において、優れた業績を挙げた、または新生面を開いた人物に対して贈る、平成25年度(第64回)の芸術選奨文部科学大臣賞18名と同新人賞11名の受賞者を発表した。美術関係の受賞者と贈賞理由は以下の通り。
文部科学大臣賞【美術】部門
大竹伸朗氏
絵画、コラージュ、彫刻、写真など多彩な領域で注目されてきた。平成25年は創作活動の集大成といえる展観が国内外で実施された。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では新作と国内未発表インスタレーション作品、高松市美術館では回顧展、第55回ヴェネチア・ビエンナーレには思索と表現の積層を成すともいえる「スクラップブック」を出品、強い存在感を示した。氏の国際的な注目を集めるに至る全ての作家活動が礎となっての贈賞である。
福田美蘭氏
若くして安井賞を受賞して以来、独自のスタイルを切り開き続けた画家である。美術の固定観念を覆すという一貫した姿勢に貫かれている。近年は古今東西の名画を基にしながらも、単なるパロディーではなく美術そのものの成り立ちを問い直す作風を確立した。東京都美術館での個展は現代の様々な出来事を題材にした多くの新作を含み、「現代を映す鏡でありたい」との言葉通りの充実した内容であった。
新人賞【美術】部門
米田知子氏
個展「暗なきところで逢えれば」は初期作から東日本大震災をきっかけに生まれた「積雲」や旧・南樺太に取材した「サハリン島」など最新シリーズに及ぶものであったが、徹底した現場主義と視覚主義の結合が、写真による歴史へのアプローチのための強力な手段となり得ることを見事に示した。
新人賞【芸術振興】部門
五十嵐太郎氏
「あいちトリエンナーレ2013 揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」の成果に対し贈られた。その芸術監督を務め、東日本大震災と福島第一原発事故に関する、多様な領域・傾向・角度の表現を美術館の内外、名古屋・岡崎両市を横断して結集し、震災に関わる芸術的な経験の場として出現させた。それは美術国際展の中に建築を深く結び就けた点で高く評価された。
新人賞【評論等】部門
佐藤志乃氏
「『朦朧』の時代―大観、春草らと近代日本画の成立」が選出された。近代日本画の革新は横山大観、菱田春草の「朦朧体」抜きには考えられない。氏はそれを絵画運動のみならず当時の幅広い文化の中に置き直し、その意味の多様性と広がりを時代相とともに鮮やかに浮き彫りにしてみせた。近代日本画研究を進展させる優れた著作として高く評価された。
「新美術新聞」2014年4月11日号(第1341号)3面より