【インタビュー】 東京美術倶楽部が工芸分野の鑑定を開始

2014年05月27日 11:28 カテゴリ:最新のニュース

 

東京美術倶楽部鑑定委員会に本年5月から工芸分野が発足
―工芸部門統括の副社長・中村純氏に聞く

 

東京美術倶楽部(東京都港区)では、明治40年の設立以来、美術品の保存・活用ならびに美術に対する正しい認識と理解の普及を図ることを目的に、さまざまな活動や事業を展開してきた。美術品の鑑定では、昭和52年に鑑定委員会を設立、長年の経験や資料を基に、日本画、洋画を対象に鑑定を行ってきた。そして、本年5月からは近年要望が多くなったという工芸分野での鑑定委員会も発足した。昨年6月に東京美術倶楽部副社長ならびに東京美術商協同組合理事長に就任し、淺木正勝鑑定委員長の下、工芸部門の鑑定の統括をしている(株)中村好古堂代表取締役社長・中村純氏に工芸鑑定委員会発足の経緯や今後について聞いた。

 

 

東京美術倶楽部副社長・中村純氏

 

-工芸部門発足の経緯は
鑑定制度がしっかりしていないとお客様が安心して美術品を購入できないという要望を受けて、東京美術倶楽部では昭和52年から絵画の鑑定を行なってまいりました。工芸に関しては、絵画ほどの強い要望はなかったのですが、最近になりまして、お客様からそういう要望が聞かれるようになってきました。

 

また、鑑定を始める一番大きな理由は、工芸の場合、ご遺族の方が中心になって鑑定をされている場合が多く、必ずしも100%制度化されていないことです。最近ではご遺族の方も高齢化されて、どこに鑑定を持っていっていいか分からなくて、お困りになっていている方もたくさんいらっしゃると聞きます。現在、ご遺族の方やお弟子さんなどがきちんと鑑定されているところは問題はないのですが、欠けている部分があって、私どもに出来ることがあれば、そこを埋めていきたい、流通のお手伝いをしていきたい、そんな思いから始めました。また、工芸は国内だけではなく、海外でもたいへん評価が高くなってきました。国内の市場性を固めなくてはいけないと感じています。

 

 

-遺族との関係は
ご遺族の方と連絡をとって話し合いをしたうえで、覚書を結び、その作家の方だけの鑑定を行なっています。また、亡くなられた作家の方の作品が流通していくためには、鑑定制度がしっかりしていなければ、作品の価値が下がっていってしまいます。そういう意味でもご遺族の方のお役に立てればと思っています。

 

 

-鑑定方法は
一昨年から具体的に委員会を立ち上げて、みんなで話し合いを持ち、具体的な品物を持ってきて擬似的な鑑定委員会を開いたりして準備してまいりました。5月からは実際に鑑定を始めているのですが、対象の作家に関して工芸の専門知識があって経験豊富な十数名の鑑定委員で行なっています。もし疑義があって調べなければならない時には、専門的なところで科学分析も必要に応じてやりますし、特別な情報や事例があればどこにでも行って調べようと思っています。

 

 

-今後について
あくまでも私どもは流通するうえで鑑定の制度がうまくいっていない作家の方にのみ、なおかつご遺族からの要望がある方のみを対象にしています。現在は20名ですが、必要があれば増やしていきます。ただ、作家を増やしていきたいというのではなく、必要であれば増やしていくということです。お客様やご遺族の方の要望しだいということです。鑑定の仕事というのは大変で、責任も重大ですが、美術業界全体のことを考えると担っていかなくてはならないものだと思います。そんな気持ちで取り組んでいます。

 

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[ときの人] 三谷忠彦さん 東京美術倶楽部代表取締役社長

 

「新美術新聞」2014年6月1日号(第1345号)2面より

 


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