日本の国公私立美術館の連携協力を図る全国美術館会議(全美、会長=青柳正規・国立西洋美術館館長)の第61回総会等が5月28日(月)、29日(火)の両日、徳島県鳴門市の大塚国際美術館システィーナ・ホールなどを会場にして開かれた。
総会には全国から会員館130館の館長、学芸関係者223人が参加、事業・決算の報告や予算(案)の承認、3・11震災後の各企画委員会の活動経過報告、それを受けた特別セッションの討議が夕刻過ぎまで行われた。
28日午前に理事会、午後に同美術館B3システィーナ・ホールで総会を開催。世界の名画1000点以上を原寸大の陶板で再現した館内のメーンとなる同ホール、ミケランジェロの最後の審判図を背景にした演壇は例年の雰囲気とは異なり、天井高の大空間で迫力ある総会光景。
冒頭、青柳会長は「今回このような立派な総会を準備していただいた関係者に心から御礼申し上げます。実は約20年前に大塚国際美術館の企画段階からご縁があり、携わった私としては感無量の思いです。一種のコピー美術館なのですが、世界にほとんど類例が無く、また費用を惜しまずかけて内容的にも見応えある美術館です。オープン時にフランスのフィガロ紙が取材し、1頁の特集記事で絶賛したほどです。こういう場所で総会、セッションの討議を出来ることを嬉しく思います」と述べた。
続いて徳島県知事、鳴門市長の歓迎挨拶、文化庁長官(代理)の来賓挨拶があり、議長には田中秋筰・同美術館常務理事が選出された。
議事では第1号議案の平成23年度事業・収支決算報告。2号議案の同24年度事業計画(案)・収支決算(案)。3号議案の今年度新入会員館の一関市博物館(大石直正館長)、海の見える杜美術館(梅本道雄館長)、新潟市新津美術館(横山秀樹館長)の3館。退会は北海道立三岸好太郎美術館、財団法人林原美術館、棟方板画美術館、マリー・ローランサン美術館、メルシャン軽井沢美術館の5館。入会賛助会員は凸版印刷、早稲田システム開発の2社。同退会ではアプトインターナショナル、文化総合研究所の2社。
4号議案の奥岡成雄、酒井哲朗2理事の退任、佐藤友哉・札幌芸術の森美術館長と早川博明・福島県立美術館長2理事の選任。以上4議案は満場一致で承認された。
この1年の活動報告では、高階秀爾企画委員長から名称変更の説明の後、(1)各企画委員会及び研究部会の活動報告。(2)東日本大震災復興対策委員会の活動報告と震災への対応については、全美ホームページにおける大震災救援・支援活動募金の呼び掛け、実施と協力者名の掲載、先の「チャリティーオークション 今日の美術展」結果、また文化財レスキュー事業への参加等があった。
(3)美術品政府補償制度の状況について、では昨年6月の制度施行後5つの展覧会が補償対象となったが、今後の課題として「法律の施行後3年を目途として政府の補償範囲について検討を加え、必要があるときは所要の措置を講ずることが特に定められている。より多くの展覧会が対象となるよう、総評価額の下限50億円の見直し等を国に求める」とした。
(4)美術著作権の管理に係る新団体設立について、では「一般社団法人日本美術著作権協会」が立ち上げられたこと、同団体に今後どう対応していくか、その内容を検討、研究していきたいとの説明があった。(5)その他では、今夏の節電事情への対処などが報告された。
特別セッションのテーマは「文化財レスキュー事業の経過とこれから」。被災文化財を守るため、昨年4月発足した救援委員会によるレスキュー事業は現在も継続中。全美も各地の会員館から100名を超える職員が被災地域で救援活動に参加した。
セッションではこの間のレスキュー活動を振り返り、その成果と問題点を検討し、将来に備えてどう取り組むのか、を討議。岡田健、村上博哉、浜田拓志、伊藤由美4氏の詳しい活動報告とそれに続く山梨俊夫・大震災復興対策委員長を進行役に4氏に小谷竜介、本多文人、藤原徹3氏を加えたパネルディスカッションがあった。
特に放射能汚染の問題については、今後もその影響を継続的に検討する場が必要ではないか、と山梨氏は指摘、事態の深刻さが明らかになった。
なお、来年度の総会は栃木県・宇都宮美術館で5月30、31日に開催されることになった。
「新美術新聞」2012年6月11日号(第1282号)3面より