【BOOK REVIEW】 6月のおすすめ

2014年06月07日 10:00 カテゴリ:最新のニュース

 

「新美術新聞」編集部おすすめのアート関連書籍をご紹介します。

 


『聖なるもの 野田弘志画集』
野田弘志著 (求龍堂/2014年4月)
本体4,800円

 

日本の写実絵画を牽引し続ける画家・野田弘志の最新画集。初期から最新作まで厳選200点を、画家の思索を元にした5章構成で紹介する。風景、静物、そして人―。これまでに取組んだ様々なシリーズを収録するが、その長い画業を通じて「世界の本質を絵画によって徹底的に探求する」という哲学的姿勢に一分のブレもないことを改めて示してくれる。谷川俊太郎、高橋睦郎、田原(でんげん)が寄せる詩も、その重厚な表現世界に効果的に呼応する。真理を希求し、リアリズムの王道を歩んできた巨匠の全貌を多面的に堪能できる贅沢な一冊と言えるだろう。


 

『やっぱりアトリエ日記』生活の友社刊
野見山暁治著 (生活の友社/2014年2月)
本体2,300円

 

「美術の窓」で連載10年目を迎えた人気コラム、2011年4月から13年10月までの日常を収載。60代で定年を迎え、暇を謳歌する知人を見て「そんな人生もあるのか。一度味わってみたい。」と言いつつ、絵も描けば文も書く、海にもぐると思えば怪我して病院通い、知人の個展にまめに足を運び、友人と酒を酌み交わす。親しい者に先立たれる悲哀を滲ませ、死後アトリエを占拠する絵の行方を心配しながらも、百貨店で初めての個展を開催、墨絵を描いたり、攻めの姿勢は変わらない。巻末の105の質問、エル・グレコの末裔を自任する画家の回答は当意即妙、あくまで粋である。


 

『小尾修画集 痕跡』術新聞社刊
小尾修著 (芸術新聞社/2014年4月)
本体3,500円

 

油彩画の古典技法研究と実直な制作姿勢に裏打ちされた、迫真性に富む写実表現が高い評価を受ける画家・小尾修。待望の初画集である本書は、初期作品からパリ留学時代の作品、近年取組むオイルスケッチまで140に及ぶ作品を収録。画家自身の言葉による作品解説や制作にまつわるエピソードも豊富で、油絵の具の物質性を活かした質感表現を拡大写真で紹介する試みも面白い。巻末には小尾修を初期から知る野田弘志が文章を寄せる。対象の本質的な美しさに迫ろうとする真摯な眼差しや油彩表現への求道的な姿勢を伝える良質な画集に仕上がっている。


 

『現代彫刻の方法』
藤井匡著 (美学出版/2014年4月)
本体2,000円

 

彫刻は素材や技法をどう捉えてきたか。その「方法」から日本の現代彫刻を丹念に読み解く。軸となるのは、鷲見和紀郎、眞板雅文、青木野枝、建畠覚造、國安孝昌らの作家論。その中で、改作にこだわったという向井良吉は特に印象的である。著者は学芸員として「現代日本彫刻展」などを手掛け、現在は東京造形大学准教授。「抽象」彫刻をいかに考えるか、その実践としても有効な一冊だ。


 

『現代アートの本当の学び方』
フィルムアート社編 (フィルムアート社/2014年3月)
本体1,700円

 

「答えがない」現代アートに対して間に合わせの答えを提示するのではなく多様な視点を提供する本書。執筆者には会田誠、日比野克彦のほか成相肇、土屋誠一など各分野のプロ15名が名を連ねる。美大や社会など学びの場の現状や矛盾を指摘する前半部とQ&A、現代アートを学ぶ若者の座談会や先達の実例を挙げる後半部で構成。多様であるからこそ面白い現代アートの魅力を伝える。

 


 

『プッサンにおける語りと寓意』
栗田秀法著 (三元社刊/2014年3月)
本体3,800円

 

本書は「アルカディアの牧人たち」等の作品を詳らかに読み解き、ニコラ・プッサンが物語画の説話的表現の中に造形的なレトリックを駆使しつつ、寓意を込めようとしたことを検証するものだ。「黙せる詩」たる絵画の限界に挑戦し、叙述と寓意の表象の両立に努めた17世紀フランス絵画の巨匠。鑑賞者がその世界を理解するには、作品背景の知識と入念な観察が求められるようである。

 


 

『古社寺の装飾文様 素描でたどる、天平からの文化遺産(上・下)』
川那部千穂編(青幻舎/2014年3月)
本体各1,200円

 

東大寺、法隆寺、伊勢神宮、厳島神社・・・全国有名社寺に伝わる数多くの装飾文様。明治時代、画家小田切春江はそれらの意匠に惹かれ、諸所を巡り、資料を手にし、模写を続けた。完成したのが、全八巻からなる文様集『奈留美加多』。工芸、建築、絵巻や織物などとあらゆる宝物に施された装飾は、脈々と現代に受継がれる日本文化の根源である。絢爛栄華で豊かな文様1,100余点を収録。

 


 


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