日本の国公私立美術館の連携協力を図る全国美術館会議(全美:加盟363館、会長=建畠晢・埼玉県立近代美術館長)の第63回総会が5月22日(木)・23日(金)、広島県広島市の広島県立美術館、ひろしま美術館、広島市現代美術館等を会場にして開かれた。全国から会員館167館の館長・学芸関係者ら約290人が参加、事業・決算の報告や予算(案)の承認、企画委員会・研究部会、東日本大震災復興対策委員会の活動報告、美術品補償制度の見直し等の報告が行われた。
昨年5月末開かれた宇都宮市の前回総会において青柳前会長(その後7月、文化庁長官就任)から建畠会長にバトンタッチされた。22日午前の理事会後の総会で開会挨拶に立った建畠会長は「青柳会長時代には東日本大震災復旧救済事業あるいは美術品国家補償制度の整備など非常に幅広い活動に取り組んで頂きました。こうした成果を私共してもさらに発展させるべく活動していきたい」と述べた。
また来賓として登壇した青柳文化庁長官は次のように語った。
「現在のポストに就いて1年弱です。この4月末~5月に東北のいわき市、八戸市、千曲市、尾道市の4市を“長官表彰” (平成25年度文化芸術創造都市部門)で視察しました。そこで感じたのは、成熟化・高齢化・少子化が進む中で経済的な基盤の有る無しは様々ですが、これからの日本の社会において、経済の活性化が大事であると同時に、そのバックグラウンドがない都市や農村に住んでいる方々が勢いを増し充足感を得るには、やはり文化や美術が非常に重要な役割を果たすという実際をこの目で確認できたことです。例えば、いわき市のいわき回廊美術館では地元のNPOによる活動していることなど、実に様々な取り組みが『こういうやり方があるのか』と驚くほど新鮮なアイデアで、どんどん進められています。これから文化庁では『現代美術の海外発信に関する有識者会議』を最近設置しました。もう一つ、アーカイブを創るためのノウハウをどういう方向にもっていけばいいのか、をやはり有識者会議を開いて予算獲得に向け活動したい。国も地方自治体も財政は厳しいけれど、それに屈することなくアイデアで美術の有効性を発揮していきたいと考えています。今日の全国美術館会議の場でも様々な情報が交換され、新しい文化を盛り上げる相互の催しになると期待します。」
議案では平成25年度事業報告並びに収支決算、監査報告、26年度事業計画(案)・収支予算案が承認された。新入会員館では、①福島美術館(市川義直館長)、②愛知県陶磁美術館(下畑昌史館長)、③上田市立美術館(滝澤正幸館長)、④富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館(染谷滋館長)、⑤一般社団法人林原美術館(谷一尚館長)、⑥CCGA現代グラフィックアートセンター(木戸英行館長)、⑦小林古径記念美術館(中島浩館長)、⑧あべのハルカス美術館(浅野秀剛館長)の8館、平成25年度退会会員館は箱根美術館、ニューオータニ美術館、草月美術館、茨城県つくば美術館の4館が報告され、加盟館は371館となった。
青柳正規氏(前国立西洋美術館長)、島田紀夫(前ブリヂストン美術館長)の役員退任に伴い、新役員には水沢勉・神奈川県立近代美術館長、浅野秀剛・大和文華館長/あべのハルカス美術館長が選任された。平成26年度入会賛助会員は、弘中智子(板橋区立美術館内)、(株)NHKエデュケーショナル、関西ペイント販売(株)、(株)グッドフェローズ。
報告では雪山行二・企画委員会委員長および各研究部会の説明が行われた。また、山梨俊夫・東日本大震災復興対策委員会委員長らより活動報告等があった。
また江崎典宏・文化庁美術学芸課長から「美術品補償制度の見直しについて」があり、その運用状況や成果、ヒアリング4回を経ての現状と課題、改善に向けた今後の方策などの詳細な説明があった。さらに栗原祐司・国際博物館会議(ICOM)日本委員会委員から「2019年、京都でミュージアムの世界大会を!」の趣旨で招致に積極的な支援、その経過報告、今後の周知の協力、「ICOMカード」会員の普及協力の要請が行われた。
総会後、特別セッション「美術館の地域連携―広島の事例」が開かれ、越智裕二郎・広島県立美術館長、福永治・広島市現代美術館長、古谷可由・ひろしま美術館学芸部長が登壇し、「アート・アーチ・ひろしま2013」連携事業の成果と展望が報告された。
来年の全美総会は、5月28日・29日、福島県郡山市での開催となり、担当館は郡山市立美術館、福島県立美術館、いわき市立美術館、(公財)諸橋近代美術館と発表された。
「新美術新聞」2014年6月11日号(第1346号)3面より