絵画:マルシャル・レイス氏 彫刻 :ジュゼッペ・ペノーネ氏
建築:スティーヴン・ホール氏など5部門5名 決まる
世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(公益財団法人日本美術協会主催)の第26回受賞者が決まり、発表された。各部門の受賞者の略歴と授賞理由は次の通り。受賞者には感謝状、メダル、賞金1500万円が贈られる。
〔絵画部門〕マルシャル・レイス(1936年フランス・ヴァロリス・ゴルフ生まれ)
詩人の心を宿したマルチな造形芸術家と評される。油彩絵画であったり、アングルの「グランド・オダリスク」など歴史上の名画をネガ処理した平面、あるいはブロンズ彫刻等、心の赴くまま自由に表現活動するのが特色。メイド・イン・ジャパンのシリーズで知られる。「私の作品は妻の影響がある」といい、田園生活を送りながら今も制作を続ける。
〔彫刻部門〕ジュゼッペ・ペノーネ(1947年イタリア・ガレッシオ生まれ)
自然との関係の中から様ざまな作品を生み出す。豊富な種類の素材を使い、自然と自己の関わりを反映させる。60年代後半にイタリアで起きたアルテ・ポーヴェラの旗手として注目をあびた。木材の中にある年輪を見つめながら木を削ってゆき、その原型の姿を現出させる。自然の持つ生命力を知的に表現する作品は高い評価を受ける。
〔建築〕スティーヴン・ホール(1947年アメリカ・ブレマートン生まれ)
空間を彩る光と色彩。足を踏み入れた時に得られる「体験」を重視する。ヘルシンキ『キアズマ現代美術館』は代表作。日本との関わりも深い。磯崎新氏の招きで手掛けた福岡市の集合住宅『ネクサスワールド・スティーヴン・ホール棟』(1991)は初の海外進出となった作品。「わび・さび」をコンセプトに、ふすまや障子にアイディアを得て、ライフスタイルに合わせて自由に間取りを変えられる構造だ。また、千葉・幕張でも集合住宅を手掛けている。
〔音楽〕アルヴォ・ペルト(1935年エストニア・パイデ生まれ)
独自の存在感を誇る、現代で最も優れた作曲家の一人。ロシア正教に帰依しながら現代音楽とは異なる原初的な宗教音楽を研究、「ティンティナブリ」(鈴鳴らし)の技法を見出した。現在はドイツを拠点に活動する。エストニアから初の世界文化賞受賞。
〔演劇・映像〕アソル・フガード(1932年南アフリカ・ミテルブルグ生まれ)
「世界でシェイクスピアの次に多く上演される」世界有数の劇作家。南アフリカの国民的人気作家、アパルトヘイト(人種隔離政策)への断固たる姿勢で知られる。『血の絆』は国際的に成功した。
なお、第18回若手芸術家奨励制度の対象団体には、ベナン共和国でアフリカ文化芸術の振興に努める「ジンスー財団」(ベナン)が選ばれた。
「新美術新聞」2014年8月1・11日号(第1352号)3面より