「日本の若手写真家を世界へ」をスローガンに、優れた写真作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供する「JAPAN PHOTO AWARD」。その第2回の受賞者が決定した。今回は650名のエントリーの中から4名が決定。受賞作品は一つの冊子にまとめられ、PARIS PHOTO(フランス)を始めとしたアートフェアや美術館等で配布される。また作品の一部はNEW CITY ART FAIR(台湾)、ART SAPPOROで展示・販売される。受賞者は以下の通り。
■太田睦子賞
一之瀬 ちひろ《KITSILANO》
1975東京生まれ、国際基督教大学大学院教養学部比較文化学科修士1年在学中。
〈太田睦子のコメント〉
日々の暮らしの中に現れる美しい光景、人とのやりとり、去来するさまざまな思い、流れて行く時間……人生は、儚く逃げていってしまう瞬間の積み重ねで構成されている。そうした言葉にしづらい記憶の断片を、まるで花や昆虫を標本するように写真でピンナップしていく。そのやり方はけっして器用なものではないけれど、詩人が言葉を選ぶように慎重かつ丁寧で真摯。リリカルな作品に対象に対する畏れと賛美に満ちた視線が貫かれていて、心地よい。(公式サイトより)
■サイモン・ベーカー賞
矢野信夫《証拠の追跡》
東京生まれ、日大芸術学部写真学科卒
〈サイモン・ベーカーのコメント〉
矢野信夫はカメラのレンズを通して世界の魅力的な見えを教えてくれます。とても几帳面でありながら偶然性も大切にするという二面性がある。彼は好奇心と高度な計算を両立した作家です。奥行きと平面の振れ幅に重点を置き、その特性を増感させる色を用いた構成はとても力強い。私は彼の作品の多様性(限られた作品の範囲の中で)だけでなく、様々な異なるイメージが結び付き、はっきりと定義されている彼自身の芸術観に感銘を受けました。一連の作品の中には際立って目立つ作品もありますが、それも含めてひとつのポートフォリオとしてとてもうまく成り立っています。今回彼がこのような強力な作品を見せてくれたことを祝福し、彼の将来に大いに期待したいと思います。
■シャーロット・コットン賞
長谷川珠実《dystopia》
1991年群馬県生まれ、2014年専修大学文学部卒業
〈シャーロット・コットンのコメント〉
彼女の感性と世界に対するアプローチがもたらした非常に多様な振幅を持った写真に面白みを感じました。彼女の一連の作品は私を喜びと辛辣さ、親密さとよそよそしさのあいだをすいすいと行き来するような不思議な旅に連れて行ってくれました。(公式サイトより)
■ステラ・スッチ賞
藤原聡志《Code Unknown》
1984年兵庫県生まれ、2007年大阪芸術大学芸術学部卒
〈ステラ・スッチのコメント〉
藤原聡志の今作において最も注目すべき点は、彼のポートレートが痛みに満ちドラマティックで繊細であること、とはいえ日々の通勤の不快感が実際に静止画として立ち現れていることです。フルクローズアップされた乗客たちの顔は彼らをグロテスクで怪物のようにもに思わせます。どの乗客のポートレイトも彼らに許可無く撮られたものではありますが、だからこそ彼らの無自覚な表情を捉えることができたのでしょう。これは作家の注意深い目の賜物でもあります。にもかかわらず、見る側は作品を一見したところでポートレイトの被写体になった人物と作家との関係性を探ろうとしてしまいます。私には見る者が自身との類似性を感じているのではないかと言わざるを得ません。関係性を探ることは、「自分はこうではない」という完全なる非理想と正常な気持ちの表れであるからです。しかしながら作家の“裏切りの視線”から隠れることはどんなことをしても不可能でしょう。(公式サイトより)