オルセー美術館、故宮博物院などから名品が集結
「鳥獣戯画」に最長5時間の入場待ち
全国の主な美術館・博物館や展覧会を主催する新聞社やテレビ局を対象に、2014年7~12月に開催(会期途中の展覧会も含む)された主な美術展の入場者数調査を行った。今期は、「笛を吹く少年」(「オルセー美術館展」)、「鳥獣戯画」、「鳥毛立女屏風」(「第66回正倉院展」・「日本国宝展」)など、誰もが目にした覚えのある国内外の名品が国立ミュージアムに集まり、入場の待ち時間の話題に事欠かなかった。このような大型展覧会のみならず、美術館では初開催となるクーニング展など注目に値すべき企画も見られた。
表は総入場者数が10万人以上の展覧会。70万人近い入場者を引き寄せたのは、国立新美術館で単独開催した「オルセー美術館展」(国立新美術館)。印象派作品のみならず同時代のアカデミスム絵画も出品し、印象派の生まれた時期の美術界の様子、同時代に生きる人々の息遣いを伝えようとした。東京国立博物館と九州国立博物館の二会場で開催された「台北 國立故宮博物院」には合わせて65万人以上が入場。故宮博物院で必見と言われる「翠玉白菜」(東京展のみ)と「肉形石」(九州展のみ)が海外初公開となり、人垣に囲まれた。入場まで数時間待ちとの情報に、「この待ち時間で台湾に行ける」とのぼやきがネット上に流れた。
日本の国宝人気も揺るぎない。「日本国宝展」(東京国立博物館)、「国宝 鳥獣戯画と高山寺」(京都国立博物館)、天皇皇后両陛下の傘寿を記念する「第66回正倉院展」(奈良国立博物館)と、教科書やミュージアムグッズなどでもお馴染みの名品に来館者が殺到した。展示室にたどりつくまで最長で5時間以上かかったという鳥獣戯画展は、来年4月28日より東京国立博物館に巡回するが、さらなる人出が予想される。「伝源頼朝像」など京都国立博物館が収蔵する名品を集めた「京へのいざない」展には約33万人、同館・平成知新館オープンに華を添えた。東日本大震災復興を祈念する「奈良・国宝室生寺の仏たち」(仙台市博物館)も76,812人と健闘した。
「ウフィツィ美術館展」(東京都美術館)も会期終了時に20万人を超えそうな勢いだ。日本で初めての開催であり、ボッティチェリを始めとするルネサンス絵画を味わう貴重な機会となった。
一日当たりの入場者数が多かったのは、順に「正倉院展」(13,467人)、「オルセー美術館展」(7,570人)、「京へのいざない」展(5,912人)。国立ミュージアムが多くの入場者を集める結果となったが、地方でも意義深い展覧会が見られた。四国霊場開創1200年を記念して9月から11月にかけて高知県立美術館、愛媛県美術館、香川県立ミュージアム、徳島県立博物館で開催された「四国へんろ展」。全4館で展示された資料はなく、各館が県の文化財など地域性ある独自の展示を行った。会場には白装束姿のお遍路さん、また彼らを案内する「先達」が館内でも展示解説する姿も見られたという。
12月23日まで開催される「赤瀬川原平の芸術原論展」(千葉市美術館)は、赤瀬川氏が展覧会の始まる2日前に亡くなり、図らずも追悼展となった。同氏の幅広い活動を500点以上もの資料によって語る展示は見応え十分。図録も充実しており、入場者のおよそ5人に1人が購入しているそうだ。会期途中で見逃せないのは、「フェルディナント・ホドラー展」(国立西洋美術館)と「ウィレム・デ・クーニング展」(ブリヂストン美術館)で、いずれも来年1月12日まで開催。ホドラー展は映像や壁画の複製を効果的に採り入れ、解説パネルにも工夫が見られる。抽象表現主義の巨匠を紹介するクーニング展は、日本の美術館では初めての開催。米国のパワーズ夫妻のコレクションを中心に35点を展示、代表作ながら一般公開が稀な作品群に接することができる。
【関連リンク】入場者数レポート 2014年前半の主な展覧会の話題から