記憶の軌跡と出会うとき—「勝野眞言彫刻展」が長野で開催

2015年04月22日 10:00 カテゴリ:日展

 

 

彫刻家・勝野眞言(1954年長野県生まれ、日展・白日会・日本彫刻会会員、崇城大学芸術学部教授)の個展が、アルプスを望む長野県伊那市のかんてんぱぱガーデンにて開催される。

 

木曽川の上流、緑豊かな木曽谷の山の中に生まれ、日々の暮らしの中で変化して行く自然を見ながら、自分の将来を山の向こうに描いていたという勝野。その後、彫刻の道へ進み、一貫して人物表現を追求してきたが、自身の造形の中には「いつも故郷の山々の姿が息づいている」と話す。

 

1987年の第19回、1991年の第23回日展で特選となり、第70回白日会記念展で白日賞を受賞。2000年の日本現代陶彫展への出品をきっかけに土を素材としたセラミックの表現や籾殻を用いた野焼きの技法を始め、2005年の第35回日彫展で西望賞、同年の第37回日展で日展会員賞を受賞した。現在は日展、白日会展、日彫展を中心に発表を重ねる一方で、熊本の崇城大学で後進の指導にあたっている。

 

この15年は、人間の手を離れたいわば「自然の作為」をいかに自らの表現に取り入れるかを、模索し続けてきた。中でも籾殻を用いた野焼きは、雨や風など自然との格闘だ。だからこそ生半可は許されず、全力で取組む。そうして、自身の全力に自然が応えてくれたとき、まさに「恵み」と言えるような大胆さ、エネルギーをそなえた作品が生まれてくるのだという。

 

今展では、有田焼などに使われる天草陶石や水俣の山の土など、熊本の素材を用いたセラミック、テラコッタの等身大から中・小の立体約80点に、デッサンなどを加えた100点余を一堂に展示する。磨き抜かれた、きめ細やかな白い肌が美しいトルソー「植・Ⅶ」では、割れた頭部からのぞく内側の表情が、作家の徹底した仕事を一層引き立て、一方で、テラコッタの煤けた黒の大胆な景色は、人間の技を超えた自然の力を感じさせてくれる。

 

生まれ育った故郷を原風景として、自然と真摯に向き合いながら、人間表現を追求し続ける彫刻家・勝野眞言。新緑が美しい初夏の長野で、ぜひその仕事を堪能してほしい。

 

 

勝野眞言彫刻展 ―記憶の軌跡と出会うとき・Ⅱ―

【会期】2015年4月29日(水)~5月10日(日) ※会期中、作家は毎日在廊

【会場】かんてんぱぱガーデン 西ホール (長野県伊那市西春近広域農道沿い)

【TEL】0265-78-1121

【休館】無休

【開館】10:00~17:00

【料金】無料

 


関連記事

その他の記事