募集規模、賞金総額など、破格のスケールから注目を集めてきた国際公募展「アートオリンピア2015」の各賞が決定した。世界52ヵ国、4,186点の応募作品の頂点(最高賞)に選ばれたのは、田中正氏(62)の「おかえりなさい」。点数制の公開審査などから、美術作品の「正当な評価」とは何かも問いかける初の試みとなった。
最終審査会は6月10日(水)、東京・池袋の豊島区新庁舎で開催された。区議会議場を審査会場に14名の審査員(宮田亮平・審査委員長)が集い、片岡鶴太郎、政井マヤの両氏が司会進行。ユーストリーム、ユーチューブでのネットライブ配信を含む、公開審査となった。
東京、ニューヨーク、パリ3拠点での一次審査を経て、最終審査に進んだのは236作品。各審査員が手元のタブレットに点数を入力すると、リアルタイムで得点が大型モニターに表示される。各審査員、1作品への持ち点は100点。14名の入力が終わるとその作品の総得点が表示され、得点上位者のリストが刻々と移り変わる。審査会は午前から午後にかけて、約3時間にわたって開催された。
最高賞となる一般部門1位(金賞)には、群馬県前橋市在住の田中正氏(62)「おかえりなさい」が決まった。画材はボールペンと色鉛筆。緻密なタッチによる幻想的な群像図は、大木や巨人、屋根に乗った舟など象徴的な要素に富み、ヘンリー・ダーガーも思わせる作風である。田中氏は10代から油絵を描き地元のグループ展などで発表。建築塗装業に従事しつつ、制作を続けてきた。現在のような作風は2005年頃から。「明確な意図はなく、描きたいと思うものを描いてきた。描くものは想像から広がっていく」という。金賞の賞金は12万ドル(約1,480万円)。本作は、審査員特別賞(キャラ・ヴァンダー・ウェグ=ガゴシアンギャラリーディレクター)との同時受賞となった。
そのほか、一般部門2位はアントニオ・ファリア(ポルトガル)「red forest」、同3位はウー・ユーシェン(台湾)「Cypher of Pixie」の各氏。ウー・ユーシェン氏は学生部門の1位にもなった。学生部門の2位はmimasho-(日本)「ハードボイルド探偵」、3位は吉田晋之介(日本)「マザーボード」の各氏が決定。
「静かなオークションのようだ」といった声も聞こえた今回の審査会。これまで挙手を中心とした非公開審査が常であったコンクール展に新鮮な緊張感をもたらし、一石を投じたと言えるのではないだろうか。なお、一般部門の1位から3位と学生部門1位は、今展共催をつとめる人間国宝美術館(神奈川県・湯河原)に収蔵される。
展覧会は、6月13日(土)から28日(日)まで、審査会場と同じく豊島区新庁舎にて開催中。次回は2017年の開催を予定している。
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