全国の美術館、展覧会を主催する新聞社・テレビ局を対象に、2015年1月~6月に開催(2014年末に開始、あるいは会期途中の展覧会も含む)された大型展覧会の入場者数調査を行った。今期はルーヴル美術館や大英博物館など、世界有数の美術館・博物館の優品を紹介する大型展が人気を集めた。一方、美術館での開催ではないものの「チームラボ」展のようにアートの新たな可能性を示したものが動員を伸ばすなど、今日における美術表現のひろがりを示す結果となった。
展覧会名 | 会期 | 会場 | 主催 | 入場者数 |
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チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地 | 14/11/29~5/10 (137) | 日本科学未来館 | 日本科学未来館、チームラボ、日本テレビ放送網、BS日テレ | 465,995 |
探検!体験! 江戸東京 | 14/12/2~3/8(79) | 東京都江戸東京博物館 | 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、朝日新聞社 | 133,715 |
みちのくの仏像 | 1/14~4/5 (73) | 東京国立博物館 | 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社 | 179,521 |
新印象派-光と色のドラマ | 1/24~3/29(56) | 東京都美術館 | 東京都美術館、日本経済新聞社 | 148,293 |
チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで | 1/31~5/10 (87) | 神戸市立博物館 | 神戸市立博物館、朝日新聞社、朝日放送 | ※ 218,044 |
ベスト・オブ・ザ・ベスト | 1/31~5/17 (93) | ブリヂストン美術館 | ブリヂストン美術館 | 151,966 |
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 ~アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから | 2/7~5/24 (95) | 三菱一号館美術館 | 三菱一号館美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、ワシントン・ナショナル・ギャラリー | 167,459 |
ルーヴル美術館展 日常を描く ―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄 | 2/21~6/1 (89) | 国立新美術館 | 国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社 | 662,491 |
「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015」 | 3/7~5/10 | 京都市美術館、京都府京都文化博物館ほか | 京都国際現代芸術祭実行委員会、一般社団法人京都経済同友会、京都府、京都市 | 264,218 |
生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村 | 3/18~5/10 (48) | サントリー美術館 | 読売新聞社 | ※ 155,194 |
ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美 | 3/21~6/28 (88) | Bunkamura ザ・ミュージアム | Bunkamura、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社 | ※ 183,126 |
マグリット展 | 3/25~6/29 (86) | 国立新美術館 | 国立新美術館、ベルギー王立美術館、読売新聞社、TBS | 338,478 |
徳川家康没後400年記念特別展「大 関ヶ原」展 | 3/28~5/17 (48) | 東京都江戸東京博物館 | 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、テレビ朝日、BS朝日、博報堂DYメディアパートナーズ | 222,953 |
大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史 | 4/18~6/28 (62) | 東京都美術館 | 東京都美術館、大英博物館、朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション | 300,436 |
鳥獣戯画―京都 高山寺の至宝― | 4/28~6/7 (36) | 東京国立博物館 | 東京国立博物館、高山寺、朝日新聞社 | 239,115 |
●調査対象:2015年1月~6月にかけて全国で行われた企画展の中から任意で抽出。 ●入場者数:主催館発表による(※はメディア数値発表)。 ●会期:カッコ内は開催日数。「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術際2015」は会場ごとで異なるため省略。 |
ヨハネス・フェルメール 《天文学者》1668年
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / René-Gabriel Ojéda /
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調査対象となった展覧会の中で最も入場者数が多かったのは、国立新美術館「ルーヴル美術館展」。総入場者数は66万2,491人、一日辺りの入場者数7,444人で、いずれも最も高い数字であった。同展は「風俗画」という切り口から同館コレクションを紹介するもので、16世紀のティッツァーノ、ブリューゲルから19世紀のコロー、ミレーまで、西洋絵画の巨匠たちによる作品を一堂に紹介した。なかでも目玉となったのが、初来日のフェルメール「天文学者」。ルーヴルが所蔵するフェルメール2点のうちの1点で、めったに館外に出ることがないため、今展への貸出は大きな話題となった。「ルーヴル美術館展」は現在、京都市美術館で開催中(9月27日まで)。そのほか「大英博物館展」(東京都美術館)、「チューリヒ美術館展」(神戸市立博物館)、「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(三菱一号館美術館)など、海外の美術・博物館コレクションを紹介するものが人気を集めた。
一方、国内にも優れたコレクションがあることを示したのが、ブリヂストン美術館「ベスト・オブ・ザ・ベスト」である。長期休館を前に人気の印象派から藤島武二、青木繁ら日本の近代作家、ポロックなど戦後美術まで、出し惜しみのない贅沢な展観で約15万人を陶酔させた。また、今秋開館20周年を迎える千葉市美術館では辻惟雄、小林忠、河合正朝の歴代館長が選定した所蔵名品展を開催(4/10~6/28)。美術館活動の軸となるコレクションを通じて20年の歩みを紹介しつつ、美術館の役割について再考を促す試みであった。
また、昨今アートの領域が広がり、多様な展覧会が各所で開催される中、日本科学未来館の「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」は、入場者数とともに特筆すべきものである。チームラボは、最先端の技術を用い、商品開発からデジタルアート作品の制作まで多様なプロジェクトを展開する“ウルトラテクノロジスト集団”。これまで国内外で作品を発表し、今年5月には愛知の名古屋画廊で個展を開催して話題となった。初の企画展となる同展では、その代表作とともに、子供たちに創造的な学びの体験を提供するプロジェクト「学ぶ!未来の遊園地」を展示。ファミリー層を中心に約46万人を動員した(同館企画展の入場記録を更新)。いわゆる「美術展」とは異なるものであったが、アートの新たな可能性を感じさせた展覧会として評価したい。
「ルーヴル美術館展」会場入り口の様子 ©NTV
日本科学未来館「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」会場風景
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