公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は24日、都庁で東京2020エンブレム発表会・記者会見を開催、104件の応募の中から選定された佐野研二郎氏のエンブレムがお披露目された。
エンブレムの選定にあたっては、国内外を代表するデザイナー個人による条件付き公募を実施。2014年10月に国内外から104作品(内、海外から4作品)の応募があり、永井一正氏(公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会特別顧問)を審査委員代表とする審査委員会(2014年11月17~18日開催)において、「デザインとしての美しさ、新しさ、そして強さ。そこから生まれる展開力。」を審査基準に、入選 3作品(佐野研二郎、原研哉、葛西薫)を選出し、うち1点を大会エンブレム候補と選定。国際商標確認を終了し、今年7月、IOC、IPC、東京2020 組織委員会の承認を経て、佐野研二郎氏の作品を東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会エンブレムとして決定した。
佐野氏は1972 年東京生まれのアートディレクター。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業し、現在MR_DESIGN代表。ロゴマーク、キャラクターデザイン、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、広告のアートディレクションを手がけ、亀倉雄策賞、毎日デザイン賞、ニューヨーク ADC 賞金賞、カンヌライオンズ金賞、ロンドンD&AD 金賞、ONE SHOW DESIGN 金賞、東京アートディレクターズクラブ会員賞、日本パッケージデザイン大賞金賞、交通広告グランプリなどを受賞。パリ装飾博物館に作品が多数パーマネントコレクション(永久保存)されている。
今回選定されたオリンピックエンブレムは、TOKYO、TEAM、TOMORROWの「T」をイメージし、パラリンピックエンブレムは、普遍的な平等の記号=をイメージ。審査委員の永井氏は会見で「非常に水準の高い公募だった。このエンブレムは生まれたばかりで、いわば赤ちゃん。それを育てていくには皆さんの力が必要。愛情によってこのエンブレムを2020年の東京大会を成功させる原動力としていただきたい」と述べた。
佐野氏は「デザイナーになって20年が経つが、いつの日かオリンピックのシンボルをつくってみたいと夢見ていた。非常に難しいシンボルデザインだったが、1964年の亀倉雄策のデザインが大好きで、それを大切に継承しながら、2020年らしい新しいデザインをつくっていきたいという想いがあった。デザインの力で人々の気持ちを一つに出来る、という大きい理念を持ってデザインさせていただいた」と選定された喜びを語った。
またエンブレムデザインについては「五輪のマーク自体に色んな色が使われているので、エンブレム自体はシンプルにできないかと模索した。赤い丸を象徴的に魅せるためにあえて他の色を黒や金、銀とした。『TOKYO 2020』のOが中心。五輪の真ん中の黒がそのまま上に伸びているように、また五輪の赤がそのまま日の丸になるように、というデザインにしている」と説明。エンブレムの中心に「黒」が使われていることについては「エンブレムにとって色は非常に重要な要素。1964年の時は『赤』だった。今回は全ての色が合わさった時の『黒』というのが象徴カラーになりえるのではないかと。今までは黒をメインカラーにしてこなかったのを東京が採用するというほうが、日本のデザインのアピールとしてもいのでは」とその意図を説明。
「(決まった瞬間は)夢だと思った。コンペに参加する以上、採用されたいという想いは誰しもあると思うが、実際決まったという話を聞いた時は“まさか”という気持ち。その後に責任など色々なことが頭をよぎって正直怖い部分もあった」としながら、「ただ発表となった時、“間違いじゃなかった”と。永井先生も仰ったが、このエンブレムは年月をかけて皆さんの手でつくりあげていただくもの。そういう良い意味での余白のあるエンブレムになりえたのかなと思います」と自身のデザインが担う今後について言及した。