平成27年度の文化勲章、文化功労者が10月30日に発表された。文化勲章は、本年のノーベル賞受賞者であり美術に縁の深い大村智氏(80)と、人間国宝の染織作家・志村ふくみ氏(91)らが決まった。文化功労者には、漆芸の三谷吾一氏(96)らが決定した。
大村智氏は1935年、山梨県は現・韮崎市の生まれ。山梨大学学芸学部を卒業後、東京理科大学大学院を修了。北里大学では助教授、教授、社団法人北里研究所所長などを歴任し、現在は同大学特別栄誉教授をつとめる。微生物由来の生理活性物質エバーメクチンを発見し、それをもとに動物薬として開発された「イベルメクチン」は人への効果も高く、これまでに多大な成果をあげ、顕著な功績とされた。
また、献身的な美術愛好家として広く知られ、自らのコレクションから2007年に私費で郷里に韮崎大村美術館を開館。また、女子美術大学理事長を長年つとめ、現在は女子美術大学名誉理事長をつとめる。
志村ふくみ氏は1924年滋賀県生まれ、文化学院卒業。はじめ、母から染織の手ほどきを受け、その後には木工作家・黒田辰秋や陶芸家・富本憲吉らの指導も受け、紬織の技法を深めていった。植物染料による色糸の美しさを追求し、繊細な濃淡のぼかしを取り入れた作風は高く評価される。
文筆にも才能を発揮し、『一色一生』で大佛次郎賞を受賞。芸術学院「アルスシムラ」開校など後進育成にも努めてきた。90年に重要無形文化財「紬織」保持者に認定、93年に文化功労者。本年8月には郷里の滋賀県立近代美術館で個展「志村ふくみ展―自然と継承―」が開催された。来年2月からは京都国立近代美術館、沖縄県立博物館・美術館、世田谷美術館を回顧展が巡回する。
文化功労者には、漆芸家の三谷吾一(本名・伍市)氏が決まった。1919年石川県輪島市生まれ。早くから輪島塗の沈金技法をみがき、42年に新文展初入選。以後、沈金の技法を駆使して、日展、日本現代工芸美術展を中心に発表を行ってきた。
その作風は、沈金による点彫りの効果をいかした豊かな立体表現を得意とし、貝・花・人物など自然界のモチーフを幻想的に作品化する。88年に日本藝術院賞、2002年に日本藝術院会員。日展などの要職を歴任するとともに、輪島塗技術保存会会長など、無形文化財の保存・伝承にも尽力。創作の成果とともに、後進育成などの功績も顕著とされた。
その他、文化勲章には、大村氏と同じく本年のノーベル賞受賞者である梶田隆章氏や俳優の仲代達矢氏など全7名が決定。文化功労者は、俳優の黒柳徹子氏、脚本家の橋田寿賀子氏ら、全16名に決まった。
文化勲章親授式は「文化の日」11月3日に皇居で、文化功労者顕彰式は11月4日にホテルオークラ東京で行われる。文化勲章の延べ人数は388人(現存者75人)、文化功労者は824人(現存者236人)となった。
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