世田谷区赤堤に2015年11月にオープンしたティル・ナ・ノーグ ギャラリーにて「橋場信夫―オリジン 見えないものの形―」展が開催される。
1950年に東京で生まれ、個展を中心に活動してきた橋場信夫。作家としての転機は、1978年から79年にかけてのパリ留学時代に偶然にも見ることのできたラスコー洞窟の壁画だと橋場は語る。「ラスコーの壁画で一番印象に残ったものが、手形。手形を描くのではなく、壁に手を当てて顔料を口に含み、それを吹きつけて手形を描き出していた。」
先史時代に遡り、「吹きつける」という行為に絵画の根源を感じた橋場は、それまで描いていた油の具象画に疑いを抱くようになる。またラスコーでは次のような体験もしたという。「岩肌に合わせるようにして、牛の絵が描かれていた。つまり、牛の絵を描こうとしたのではなく、岩肌をみてそこに牛の形態を見出したということになる。」これらの体験によって、橋場の絵画表現は油から離れ、絵画の根源に近づくための模索が始まることになる。
日本に帰国した橋場は1980年の西武百貨店での個展を最後に、7年間、外に作品を発表することを控えた。その7年間のなかで、上記の体験から導いた自身の方法を試すことになる。
その一つは、キャンバスの上に点あるいは線を引き、そこから広がるイメージを描き出していくものであり、これは岩肌をみて牛の形態を見出した先史時代の在り方、つまり橋場なりに絵画の根源に迫るものであった。また、素材として鉄を用い、それを敢えて錆化させることで、思いがけない形や色、作家自身の自我がなるべく介入しない方法で作品を制作したという。ラスコーでの「吹きつける」という行為は、ある種思いがけない形を期待するものであり、それを現代の視点で昇華したものであるといえる。
常に絵画の根源を求めて自分なりの視点で活動を続けた橋場信夫。今回は新しくオープンした画廊で、2006年から2015年までの作品を20~30点出品する。
【会期】2016年1月17日(日)~2月7日(日)
【会場】ティル・ナ・ノーグ ギャラリー(東京都世田谷区赤堤2-43-18)
【TEL】03-3322-1100
【休廊】月曜
【開廊】12:00~19:00
【料金】無料
【関連リンク】ティル・ナ・ノーグ ギャラリー