1951年に日本初の近代美術館として開館した神奈川県立近代美術館 鎌倉(カマキン)が2016年1月末をもって展覧会活動を休止、その長い歴史に幕を下ろす。美術ファンのみならず多くの市民に愛されたそのカマキンで1月16日、関係者を招いたクロージング・レセプションが行われた。(取材・文/橋爪勇介)
17時から行われたレセプションでは同館ゆかりのアーティストや関係者ら約540人が参加。同館に学芸員として長年携わり、2011年より館長を務める水沢勉氏は「半世紀を超える長い時間、美術館として務めを果たしてきたこの建物の労をねぎらいながら、それを生かし、味わい、ともに支えてきた方々にお集まりいただき、思い出を語り合い、鎌倉近美にお別れをしたい。鎌倉館は現在、保存活用が検討されている。まずはこの建物に本当にご苦労様でしたと言いたい」と挨拶。
「あなたは建物として誠に美しく、可憐で、その活動も含め、戦後文化の精華でした。本当にありがとう。よく頑張りました。美術館はコンテナとコンテンツ、器と中身が相乗してゆっくり発酵していく存在。性急に活性化などさせようものなら全てが台無し。そんな時間を醸成してくれたのがこの美術館です。65年間ご苦労さまでした」と美術館に感謝の言葉を贈った。
その後、17時30分からは中庭壁面に「鎌近 記憶の箱」と題した映像が投影され、65年の歴史の中で撮影された写真の数々が投影。これまで開催されてきた展覧会の様子や日常風景などが映し出され、参加者それぞれが思い出に浸っていた。またレセプションの締めくくりにはサウンド・アートの先駆的存在としてドクメンタ8(1987年)などに参加してきた鈴木昭男氏が正面入り口の大階段でパフォーマンスを披露。大きな拍手とともに会は幕を閉じた。
神奈川県立近代美術館は今後、鎌倉別館と葉山館の2館体制で活動を継続。また鎌倉館の収蔵品(屋外彫刻含む)に関しては、鎌倉別館と葉山館で保存・管理し、両館での展示や他館への貸出などに活用されるという。