絵は詩のごとく、詩は絵のごとく
古代ギリシャの詩人ホラティウスが『詩論』の中で「詩は絵のごとく」と述べて以来、西洋では詩と絵は関係の深いものとされてきました。バロックの時代になると、これに「絵は詩のごとく」という言葉がつけたされます。これは日本でも同じで、文人が絵をたしなむ文人画の存在や、画中に詩文を入れる画賛などの風習がその密接さを示しています。近代になると芸術は、各ジャンルそれぞれの純粋化が進み、絵画は詩との関係を離れていきました。西洋に影響を受けた近代の日本でも同様でした。
しかし、近代にあっても、詩を作る画家、絵を描く詩人は存在します。画家を志していたものが詩人となったり、詩人が画家になったりする例も少なくありません。たとえば稲垣足穂は若い頃絵を描いて「未来派美術協会展」に出品していましたし、西脇順三郎も絵画を志していた時期がありました。逆に詩人として出発した津高和一は後年画家になり、現在では画家として捉えられています。こうした画家、詩人たちは、絵画と詩を別のものと捉え、別の世界を表現しているのではなく、共通する世界を異なった表現で現しているのです。一方が他方を補足するような関係ではなく、それぞれがかけがえのないものであり、内面において不可分なものであると考えられているのです。
現代においては具体詩、ヴィジュアル・ポエトリーと呼ばれる視覚に訴えかける詩が生み出されています。また、多くの人たちが携帯電話やパーソナルコンピューターを使う時代にあって、自らの思いを文字として発信する画家たちも増えてきており、詩と絵画の関係にも新たな可能性が芽生えてきているようです。
本展は、明治から現代までの画家36人と、詩人28人の詩と絵を一堂に集め、ひとつの観点から捉える試みです。途中展示替えをしながら、二百数十点の作品を展示いたします。
(姫路市立美術館 学芸課課長補佐)
【会期】2016年2月13日(土)~3月27日(日)
【会場】姫路市立美術館(兵庫県姫路市本町68-25)
【TEL】079-222-2288
【休館】月曜、祝日のとき翌日
【開館】10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
【料金】一般900円 高校・大学生600円 小中学生200円
【関連リンク】姫路市立美術館