大盛況の「モネ展」 70万人超は3年ぶり
戦後70年という節目を迎えた2015年。春と秋に実施した大型展覧会の入場者数調査に、新年明けの追加調査を加えて「展覧会入場者数BEST20」として表に掲げ、その特色と背景を探った。東京集中は相変わらずだが、昨年は「琳派誕生400年」に沸いた京都にも勢いがあった。本調査(新美術新聞による)で京都の展覧会が4つ以上入ったのは、この10年で初めてことである。
展覧会名 | 会期 | 会場 | 主催 | 入場者数 | 1日平均 |
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1 | マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 | 9/19~12/13 | 東京都美術館 | 東京都美術館、マルモッタン・モネ美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ | 763,512 | 10,180 |
2 | ルーヴル美術館展 日常を描く ―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄 | 2/21~6/1 | 国立新美術館 | 国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社 | 662,491 | 7,444 |
3 | チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地 | 14.11/29~5/10 | 日本科学未来館 | 日本科学未来館、チームラボ、日本テレビ放送網、BS日テレ | 465,995 | 3,401 |
4 | ルーヴル美術館展 日常を描く ―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄 | 6/16~9/27 | 京都市美術館 | 京都市美術館、ルーヴル美術館、読売テレビ、読売新聞社 | 450,025 | 4,892 |
5 | マグリット展 | 3/25~6/29 | 国立新美術館 | 国立新美術館、ベルギー王立美術館、読売新聞社、TBS | 338,478 | 3,936 |
6 | "琳派誕生四〇〇年記念 特別展覧会 琳派 京を彩る" | 10/10~11/23 | 京都国立博物館 | 京都国立博物館、日本経済新聞社、テレビ大阪、BSジャパン、京都新聞 | 327,925 | 8,408 |
7 | 始皇帝と大兵馬俑 | 10/27~16.2/21 | 東京国立博物館 | 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社 | 約320,000 | 開催中 |
8 | 大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史 | 4/18~6/28 | 東京都美術館 | 東京都美術館、大英博物館、朝日新聞社、NHK 他 | 300,436 | 4,846 |
9 | クレオパトラとエジプトの王妃展 | 7/11~9/23 | 東京国立博物館 | 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社 | 267,959 | 4,060 |
10 | PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015 | 3/7~5/10 | 京都市美術館、京都府京都文化博物館 他 | 京都国際現代芸術祭実行委員会、一般社団法人京都経済同友会、京都府、京都市 | 264,218 | ― |
11 | 鳥獣戯画―京都 高山寺の至宝 | 4/28~6/7 | 東京国立博物館 | 東京国立博物館、高山寺、朝日新聞社 | 239,115 | 6,642 |
12 | 徳川家康没後400年記念特別展 「大 関ヶ原展」 | 3/28~5/17 | 東京都江戸東京博物館 | (公財)東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、テレビ朝日、BS朝日 他 | 222,953 | 4,645 |
13 | 第67回 正倉院展 | 10/24~11/9 | 奈良国立博物館 | 奈良国立博物館 | 221,189 | 13,011 |
14 | レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展 | 8/22~11/23 | 京都府京都文化博物館 | 京都府、京都文化博物館、京都新聞 | 219,481 | 2,710 |
15 | チューリヒ美術館展 | 1/31~5/10 | 神戸市立博物館 | 神戸市立博物館、朝日新聞社、朝日放送 | 218,044 | 2,506 |
16 | 春画展 | 9/19~12/23 | 永青文庫 | 永青文庫、春画展日本開催実行委員会 | 210,220 | 2,444 |
17 | 大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史 | 9/20~16.1/11 | 神戸市立博物館 | 神戸市立博物館、大英博物館、朝日新聞社、NHK 他 | 202,231 | 2,107 |
18 | マグリット展 | 7/11~10/12 | 京都市美術館 | 京都市美術館、ベルギー王立美術館、読売新聞社、毎日放送 | 190,062 | 2,406 |
19 | ボッティチェリとルネサンス展 | 3/21~6/28 | Bunkamura ザ・ミュージアム | Bunkamura、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社 | 183,126 | 1,869 |
20 | みちのくの仏像 | 1/14~4/5 | 東京国立博物館 | 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社 | 179,521 | 2,459 |
森美術館・東京シティビュー連動入館者数 |
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シンプルなかたち展:美はどこからくるのか | 4/25~7/15 | 森美術館 | 森美術館 | 360,902 | 5,013 |
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ディン・Q・レ展:明日への記憶 | 7/25~10/12 | 森美術館 | 森美術館 | 19,6562 | 2,457 |
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●調査対象:全国で開催された展覧会の中から、2015年1月~12月に会期がかかるものを任意で抽出。 ●会期:カッコ内は開催日数(京都国際現代芸術祭は会場ごとに異なるので省略)。 ●入場者数:主催館発表による。 |
2015年のトップとなったのは、東京都美術館「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」で約76万3千人。12年の「マウリッツハイス美術館展」の約75万8千人を超えて、同館リニューアルオープン後の入場者数記録を更新した。ここ5年を通じて見ても、12年の「ツタンカーメン展」(東京展=約115万人/大阪展=約93万人)、10年の「オルセー美術館展」(約78万人)に次ぐ4番目の数字で、印象派人気の底堅さを示した。
印象派と同じく「定番」となっているのが、海外の著名な美術・博物館のコレクション展。今回はフェルメールの天文学者が初来日した「ルーヴル美術館展」が、東京、京都あわせて約110万人という入場者数を記録した。定番でありながらも、人々の日常生活を描いた「風俗画」という、これまでに無い切り口でルーヴルのコレクションを紹介した意欲的な内容であった。
この「ルーヴル美術館展」を含む5つの展覧会がBEST20に入るなど、今回は京都の活況ぶりが目立つ。京都初の国際芸術祭「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」に始まり、秋にかけては琳派誕生400年を記念する展覧会が、京都を中心に各地で開催。クライマックスを飾った京都国立博物館「琳派 京(みやこ)を彩る」には約33万人が入場した。総入場者数では6位だが、1日平均入場者数でみれば、正倉院展、モネ展に次ぐ3位。地方創生の一環として、文化庁の京都移転が取り沙汰されているが、2020年東京五輪に向けて文化芸術の振興を掲げる東京と、日本の文化拠点として復権を図る京都の今後の趨勢に注目したい。
その他、特徴的なものとして、最先端のデジタル技術を使った作品や展示で、従来の美術展とは異なりファミリー層を中心に人気を集めた「チームラボ展」(3位)、その性質からこれまで大規模な展示がなされなかった春画の、日本で初めての本格的な展覧会「春画展」(16位)が挙げられる。
ルネ・マグリットの国内13年ぶりとなる回顧展「マグリット展」は健闘した。初期から晩年まで約130点による充実した内容もさることながら、展示室からミュージアムショップに至るまで、マグリットのファンタジックな世界観が一貫して演出されるなど主催者の手腕が光った。宣伝面でもTwitterを用いた集客やファミリーマートのコーヒーカップに展覧会告知をプリントするなど様々な試みを展開。若い世代の入場者数が他の展覧会に比べて多く、また、図録やグッズの売り上げも好調だった。
なお、同展主催の読売新聞社は今夏、同じくシュルレアリスムの大家サルバドール・ダリの展覧会を京都(京都市美術館:7月1日~9月4日)と東京(国立新美術館:9月14日~12月12日)で開催予定。50万人が入場した06年の「生誕100年記念 ダリ回顧展」(上野の森美術館)以来の大規模な回顧展となる。
(編集部)
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