トリプルアタック!―コレクションとの新たな出会い― 上條信山×池上百竹亭×田村一男
ひと味違う美のシンフォニー
細萱禮子(松本市美術館学芸員)
ひとあし早く春一番。
当館愛蔵、ジャンルを別にする三人衆、名づけて“トリプルアタック!”冬の寒さを吹き飛ばそう。
上條信山(1907~97)は書家
田村一男(1904~97)は洋画家
池上百竹亭(1890~1978)は美術コレクター兼パトロン
それぞれが、それぞれの流儀で信州・松本の地に根を下ろし、ステキな花を咲かせた。その花園を一挙に公開しようというのである。
松本生まれの信山・本名周一。快活で強い肩をもった野球少年は大志を抱いて上京。書における偉大な師を得て厳しい鍛錬と修行の末、書道界及び教育の分野に大きな足跡を遺した。飛び散る墨の飛沫、字間・紙の余白、卓越したバランス感覚による構成の妙で、ビジュアルアートとしても超一流。信山スタイルをたっぷり見ていただく。
山をこよなく愛した田村は東京生まれ。20歳の時訪れた信州蓼科高原。連なる峻峯のただ中、無限の広がりを持つ空間は生涯の出会いとなった。季節や気候によって様々な顔を見せる高地の風景、交錯する稜線や境界線の微妙な変化が、独特の長方形キャンバスに納められた。現場主義を貫く強い意志。作品の奥深いところから、沁みるように魅力が伝わってくる。
池上百竹亭は、本名喜作、松本市有数の商家の主。若いころ正岡子規の俳句革新運動に傾注したことをきっかけに、子規とその周辺の作家の作品を蒐集。生涯を通じて俳人、歌人、文人たちとの心の通った交わりを続けた。作品をより鮮明に印象づける表具一つにも、百竹亭の美学が見てとれる。
作品展示に底流するキーワードは、色や形態をいろどるトリプルライト。影に対峙して、人の心情に及んでくる三者三様の光の変容。ひと味違った美のシンフォニーをたのしんでいただきたい。
【会期】 2016年2月13日(土)~4月3日(日)
【会場】 松本市美術館 2階 企画展示室(長野県松本市中央4―2―22)
【TEL】 0263-39-7400
【休館】 月曜(祝日のとき翌平日)
【開館】 9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
【料金】 大人410円 大学高校生200円 70歳以上の松本市民と中学生以下無料、障害者手帳携帯者とその介助者1名無料
【関連リンク】 松本市美術館
■アートレクチャー 学芸講座
①「田村一男の生涯と作品」
【日時】 2月25日(木) 13:30~15:00
【講師】 武藤美紀(松本市美術館学芸員)
②「池上百竹亭コレクションにみる日本書画の扱いと鑑賞」
【日時】 3月3日(木) 13:30~15:00
【講師】 名児耶明((公財)五島美術館副館長) 対談者:細萱禮子(松本市美術館学芸員)
③「上條信山 人と作品」
【日時】 3月10日(木) 13:30~15:00
【講師】 大島武(松本市美術館学芸員)
※会場はすべて同館講座室、定員各回40名で料金は無料。参加申込は、2月13日(土)より同館で受付(松本市美術館 TEL:0263-39-7400)