日本人の「かざり」の精神読み解く
本展は、MIHO MUSEUM館長・美術史家の辻惟雄監修により、日本人の神仏への信仰と「かざり」との関連を主題に開催するものである。辻は、時代や分野を超えた日本美術を、従来注目されていなかった日本人の美意識から、「かざり」「あそび」「アニミズム」の3つのキーワードで明快に解き明かし、国際性と普遍性を持ったものとしてその本質を追求し続けてきた。本展では、煌びやかな仏教荘厳の世界、伎楽や舞楽の色彩と歌舞の世界、信仰の中の動物たち、祭りの賑わいなどを展観しながら、日本人の「かざり」の精神を読み解いていく。
「かざり」は、日常の単調な「ケ」の世界から、祭りや法会など「ハレ」の世界への転換と再生のエネルギーを得るための道具立てである。とりわけ「祭り」は「かざり」と不可分の関係にある。人の目を楽しませるだけでなく、神の目を楽しませ、神から授かった生命を寿ぐ、という祭りにおける神と人との関係性からも、「かざり」が深く宗教性に根差していることがわかる。
仏教もまた金・銀・宝石で「かざる」世界である。金銅の光輝く仏像や法具のさまざま、法会の場での僧の法衣などは、荘厳(仏国土や仏の説法の場を美しく飾ること)―「かざり」の世界にほかならない。
なかでも、深く仏教に帰依した伊藤若冲の、「モザイク屏風」と呼ばれる「鳥獣花木図屏風」(展示3/1~4/17)と「樹花鳥獣図屏風」(展示3/1~3/13)との競演はみどころだ。1cm角の方眼8万個以上をひとつひとつ塗り込めた、「桝目描き」という奇想天外な手法で描かれた屏風は、この2件が現存するのみである。両者が揃う期間は開幕から2週間のみと短いが、1997年(静岡県立美術館)以来の顔合わせを、ぜひお見逃しなく。
併せて、滋賀県の水口曳山祭、大津祭、長浜曳山祭を彩る華麗な曳山懸装品や、日吉大社山王祭の活気を写す「日吉山王祭礼図屏風」など、日本人の神仏への信仰に根ざした「かざり」の世界を幅広く展観する。
(MIHO MUSEUM学芸員)
【会期】2016年3月1日(火)~5月15日(日)
【会場】MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300)
【TEL】0748-82-3411
【休館】月曜(3月21日は開館、3月22日は休館)
【開館】10:00~17:00(入館は16:00まで)
【料金】一般1,100円 高校・大学生800円 小・中学生300円
【関連リンク】MIHO MUSEUM
■関連講演会
①「日本美術における『かざり』」
【日時】3月20日(日) 14:00~15:30
【講師】辻惟雄(MIHO MUSEUM館長)
②「かざり極まる神々の乗物 ―唐鞍を中心に―」
【日時】5月8日(日) 13:30分~15:30分
【講師】片山寛明(MIHO MUSEUM学芸部長)
※いずれも当日先着100名(美術館棟受付にて10時より整理券配布)
【会場】南レクチャーホール
【料金】参加無料(要入館料)