3月16日、東京・神宮前の裏路地に新たな現代美術のギャラリー「MAHO KUBOTA GALLERY」がオープンした。ワタリウム美術館からもほど近い都心の一等地にスペースを構えた狙い、またギャラリーの方向性とは。ディレクターの久保田真帆氏に聞いた。(取材・文/橋爪勇介)
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同ギャラリーをオープンさせた久保田氏は17年もの間、SCAI THE BATHHOUSEでディレクターとして勤務。通常業務だけでなく、国内外のパブリックアートプロジェクトやART BASEL HONG KONGのセレクションコミッティなどを務めてきた。
またSCAI以前にはパルコでパルコギャラリーの企画を担当。「写真やデザイン、ファッションの展覧会を数多く担当しました。同社ではイギリス留学(ロンドン、Sotheby’s Instituteの現代美術のコースにて勉強しました)もさせてもらっています。パルコギャラリー以前は名古屋パルコ開店のためのショッププランニングや、テナント誘致などを担当しました。アート以外の仕事を経験したことが今とても役にたっていると感じています」と話す。
MAHO KUBOTA GALLERYがあるのは神宮前三丁目の交差点からほど近く、1645年に創建された青山熊野神社がある閑静な地域だ。徒歩圏内の北参道 (千駄ヶ谷)にはTOMIO KOYAMA GALLERYやTAKA ISHII GALLERYがスペースを構えるが、氏はこの場所を選んだ理由について次のように語る。
「外苑西通りにはここ7、8年前あたりからインテリアやデザインのショップが集積するようになりました。もともとワタリウム美術館やアートブックを扱うシェルフなど、東京のアート情報を発信してきたエリアというだけでなく、「塔の家」や「原宿教会」「ブラジル大使館」など建築にも見るべきものが多く、一方2020年の東京オリンピックのメインスタジアムのお膝元でもあることを考えると今後ますますデザインやアートに敏感な人々が国内外から訪れる地域になるのではないかと思っています。」
またギャラリーの方向性について聞くと、「「現代美術ってわからない」「ギャラリーに入るのって勇気がいる」という声をよく聞きますが、一般的なライフスタイルと日本のコンテンポラリーアートの間の見えない境界線を超えて日常的にアートを楽しんでもらうためのスペースにしたいと思っています」との答え。
「デザイン立地にギャラリーを構えたのはそれも考えてのこと。ハイエンドファッションやクオリティインテリアに興味をもつ層が、特別な靴やソファを選ぶように壁に飾る作品を選んでくれたら楽しいかと。そういったお手伝いもしたいと思っております。アートに出会うことは心踊る経験であり、普段気がつかない自分の感性を意識することでもあるはず。アート初心者から見ても直感的に「面白い」、あるいは「飾ってみたい」と思えるような、ダイレクトに心に響いたり感性を刺戟するアーティストのラインナップも意識しております」とコメント。敷居が高いと思われがちな現代美術をより広い層にアピールしていく姿勢がうかがえる。
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現在同ギャラリーに所属するのはブライアン・アルフレッド、ジュリアン・オピーをはじめAKI INOMATA、古武家賢太郎、長島有里枝、富田直樹など。4月23日までは開廊第一弾展として長島有里枝展「家庭について/about home」を開催中。同展では長島有里枝が母親と共作したテントを中心に、大小の写真群によって構成されるインスタレー ション展示。 2011年から4年間、大学院で社会学を学び直し自己との真摯な対話を続けてきた長島が、新境地を見せている。
なお今後は5月10日から若手ペインター、富田直樹の個展を予定。その後6月末からニューヨーク在住の紙の彫刻で知られる安部典子、11月にはジュリアン・オピーの個展も予定されている。
MAHO KUBOTA GALLERY
【住所】東京都渋谷区神宮前2-4-7
【TEL】03-6434-7716
【休廊】日・月曜、祝日
【開廊】12:00〜19:00
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