総合開館20周年の新たな門出
約2年に及ぶ大規模改修工事を終え今年9月にリニューアル開館する東京都写真美術館が12日、平成28年度事業を発表、同時にウェブサイトをリニューアルした。
「写美」(しゃび)の呼称で知られる同館だが、総合開館から20周年を迎える今年、その愛称を英語館名「Tokyo Photographic Art Museum」の頭文字から「TOP MUSEUM(トップミュージアム)」と決定。
シンボルマークは、写真と映像を生み出す「光」によって、「TOP」の文字をうつし出したデザインで構成。同館によると「TOP」は「ドアをひらくようにも見え、感動に出会う期待感、奥行きや空間性を表しています。新しい表現の扉をひらき、お客様をお迎えする決意をイメージしています」という。シンボルマークのデザインは田中義久が担当。田中は1980年生まれで美術館やギャラリー等のV.I 計画や、アーティストの作品集の装丁、デザインを手がけており、アーティストデュオ「Nerhol」としても活動している。
制作にあたっては、2013年12月に立ち上げたプロジェクトチーム(同館職員10名と外部英語監修者1名)が中心となって、英語館名、コンセプト、デザイナーについて協議を重ね、「写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘し、新しい創造活動の展開の場となる」に基づき、新進デザイナー5組を選定。2014年6月と8月の2回にわたりデザインコンペティションを開催し、同年9月に本作を決定した。
■リニューアル・オープンは杉本博司展 世界初公開シリーズも
平成28年度事業をすべて「総合開館20周年」と位置づけ、さまざまな記念事業を開催する同館。リニューアル・オープンを飾るのは「杉本博司 ロスト・ヒューマン」展だ。
杉本博司は同館の重点収集作家であり、〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉などの大型カメラを用いた精緻な写真表現や、〈フォトジェニック・ドローイング〉〈放電場〉など、写真の発明や科学研究に基づいた写真作品で写真界のみならず、現代美術やデザイン界等で多大な影響を与え、近年では歴史をテーマにした論考に基づく展覧会や、国内外の建築作品を手がけるなど、多岐に渡る活動で注目を集めている。
今回開催される「ロスト・ヒューマン」展は<ロスト・ヒューマン><廃墟劇場><仏の海>の3シリーズを美術館内2フロアで展示し、作家の世界観、歴史観に迫るもの。2014年パレ・ド・トーキョーで発表し、好評を博した「Lost Human Genetic Archive」展のインスタレーションを東京バージョンとして新たに制作し、人類の死滅を想定し、遺物となった歴史、文明についての考察を≪比較宗教学者≫≪宇宙物理学者≫等、33の視点から展開する。
なお会場では世界初公開となる<廃墟劇場>を発表。これは1970年代から制作している<劇場>を発展させた新シリーズで、経済のダメージ、映画鑑賞環境の激変などから廃墟と化した実際の劇場で作家自らスクリーンを張り直して映画を投影し、作品一本分の光量で露光した作品。
また今回は、10年以上にわたり作家が取り組んできた、京都 蓮華王院本堂(三十三間堂)の千手観音を撮影した<仏の海>の大判作品による新インスタレーションも展覧される。
なお今年度はこの他に
「日本の新進作家vol.13 東京・TOKYO」(仮称)(2016年11月22日~2017年1月29日)
「東京都写真美術館 TOPコレクション展 東京・TOKYO」(仮称)(2016年11月22日~2017年1月29日)
「アピチャッポン・ウィーラセタクン」(仮称)(2016年12月13日~2017年1月29日)
「第9回恵比寿映像祭」(仮称)(2017年2月10日~2月26日)
「山崎博 計画と偶然」(仮称)(2017年3月7日~5月7日)
「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 総集編」(仮称)(2017年3月7日~5月7日)
の開催が予定されている。
「杉本博司 ロスト・ヒューマン」展
【会期】2016年9月3日~11月13日
【会場】東京都写真美術館2階・3階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
【TEL】03-3280-0099(4月18日より開通)
【休館】毎週月曜(ただし祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
【開館】10:00~18:00(木・金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
【料金】一般1000円、学生800円、中高生・65歳以上700円
【関連リンク】東京都写真美術館