東洋と西洋をつないだリーチ
日本を愛し、日本人に愛された英国人。
今回の「バーナード・リーチ展」開催にあたり、そんなコピーをつけてみた。周年のたびに取り上げられる陶芸家は珍しいのだ。
リーチは1897年に香港で生まれ、日本で英語教師をしていた母方の祖父母に育てられた。イギリス本国で教育を受け、ロンドンの美術学校に入学。小泉八雲の描き出す日本に憧憬の念を抱き、1909年に再来日。当時、日本に来る欧米人の多くは、極東の地の日本人を上から目線でとらえていたのではないだろうか。
しかし、リーチは違った。柳宗悦をはじめとした美術雑誌『白樺』の同人たちや、ともに陶芸家となる富本憲吉らと出会い、お互いの芸術観・宗教観を語り合い、共有し、新たな発見を分かち合った。そんなリーチだからこそ陶芸家として歩み始めると皆が支援した。とくに濱田庄司はリーチとともにイギリスへ渡り苦楽を共にする。その頃すでにイギリスでは扱いやすい工業製品が普及し、伝統的な陶器の製法は忘れられていたが、1920年、リーチはコーンウォール州セント・アイヴスで地元産の原料(陶土、薪、釉薬など)を使い、制作に取り掛かる。陶磁器の生産=職人の仕事、とされていた時代、多くの困難を乗り越えながら、やがて「陶芸家」という芸術家の先駆となったのである。
さて、リーチは日本での長期滞在の折には柳宗悦らと陶磁器の生産地を巡り、職人たちと肩を並べて制作。ときに自分の技術や意匠を伝授し、ときに職人たちの伝統技法の妙技に感嘆し、自らの作品に取り入れたりもしている。信州・松本にも幾度となく訪れ、滞在の間には西洋家具の意匠や制作方法などに助言をした。リーチが訪れた地域には、今もリーチと地元の人々との交流を偲ばせるものが語り継がれている。
東洋と西洋。二つの世界をつないだリーチの多岐に渡る作品と、本邦初公開となる柳とリーチとの間に交わされた書簡を含め、日本民藝館所蔵の逸品をぜひご覧いただきたい。
(松本市美術館学芸員)
【会期】2016年4月21日(木)~6月5日(日)
【会場】松本市美術館(長野県松本市中央4-2―22)
【TEL】0263-39-7400
【休館】月曜 ※ただし5月2日(月)、30日(月)は開館
【料金】一般1000円
【関連リンク】松本市美術館
■ギャラリートーク
【日時】5月6日(金)・13日(金)・20日(金)・27日(金)、6月3日(金) 各日とも14:00~
【料金】無料(ただし、当日有効の展覧会観覧券が必要)
【定員】各回20名程度
【申込み】不要。会場入口前に集合。