東近江市近江商人博物館は、同市にゆかりのある日本画家、中路融人による52点の作品寄贈を機に、2階を中路融人記念館とし、今年4月17日にリニューアルオープンした。現在同館では、開館を記念した「中路融人の世界—湖国の風景に魅せられて—」展が開催中。中路の言葉とともに紹介する。
尽きない情熱
人がどう言おうと自分がやりたいと思ったことは挑戦する。どこまで人に説得力をもって、私が思ったよさを表現できてるか。感じてもらえたら本望やし、あんまり皆さんから反応がなければ、まだまだね、足らんのやと思ってね。いつも全然ゆるめるってことはない。ゆるめるどころか足らん足らん。
(2015.11.9中路融人インタビューより)
近江商人を育んだ湖国・東近江市の文化発信基地として、1996年4月に誕生した東近江市近江商人博物館。今展はそのリニューアルオープンを記念したもので、雪に輝く伊吹山や榛の木の立ち並ぶ田園風景、葦がゆれる湖畔など、一期一会の自然の表情が豊かに表現された作品が展示される。
中路融人(1933年京都市生まれ)は、52年京都市立日吉ケ丘高等学校美術科(現在の京都市立銅駝美術工芸高等学校)を卒業し、働きながら日本画家、山口華楊に師事した。62年には日展で特選・白寿賞を受賞、75年に改組日展で2度目の特選、95年日展文部大臣賞、97年日本芸術院賞、2012年には文化功労者に顕彰された。また、15年には東近江市名誉市民となり同市の文化振興に貢献している。今回の寄贈に関しては「母の故郷、湖国・東近江市の芸術文化の振興と青少年の情操教育のために」としている。
京都生まれの中路だが、母親の故郷である東近江市とは馴染みが深い。幼い頃、母とたびたび訪れたこの地の情景が今も思い出として脳裏に残っており、その光景を「小鮒やモロコが釣れる曲がりくねった小川が、田んぼの間を流れる、のどかな田園地帯が広がっていた」と回想している。その後も中路はその原風景を追い求めて、60余年もの間この地を描き続けてきた。晩秋から早春の空気感を好み、寒さ厳しい季節、描きたい風景に出会うために、何度も何度も湖国に足を運び、今もデッサンし続けている。
一期一会の風景
あらゆるとこ描きにまわって。全然ね、車乗らへんでしょ。歩いてね、歩き回ってかせぐ。僕らは足でかせぐいうて。車で行ったらね、見落としてんねん。苦労して汗水たらして出会うでしょ。感動がちがうねん。その時の出会いは感動が大きいねん。(2015.11.9中路融人インタビューより)
【会期】2016年4月17日(日)~7月24日(日)
【会場】東近江市近江商人博物館・中路融人記念館(滋賀県東近江市五個荘竜田町583 てんびんの里文化学習センター内)
【TEL】0748―48―7101
【休館】月曜(祝日の場合開館、翌日休館)
【料金】一般300円
【関連リンク】東近江市近江商人博物館・中路融人記念館