今夏、洋画家・広田稔(1959年生まれ、白日会常任委員)が故郷の広島で4つの個展を開催する。
東京藝術大学大学院で彼末宏に学んだ広田は、91年より白日会展に出品を重ね、第80回白日会展では内閣総理大臣賞、第17回両洋の眼展では河北倫明賞など数々の賞を受賞している。
広田の作品のキーワードの一つといえるのが、「肉体」の描写であろう。今年3月の白日会展のイベントにおいて、人体クロッキーのデモンストレーションが披露されたことも記憶に新しい。特にバレリーナをモデルとした一連の作品群は、最小限の線で骨や筋肉の質感をも描き切り、人体の美しさを魅せる広田の代表作だ。
2013年には本能寺創建600年を記念し、舞踏家の伊藤キム、パーカッションの加藤訓子と共同で「本能寺のD」を開催。京都の本能寺本堂、パリ、愛知県知立市でライブ・ペインティングを行い、「広田自身の肉体」をもパフォーマンスの一部として昇華させた。広島県福山市の本住寺での今回の展示では、知立公演の際に描いた大作を展示する。
近年取り組んでいる「レモンの森」シリーズは、イラク戦争前にシリアを旅した際に、そこで見たレモンの木々や狩猟の壁画などから発想を得たのだという。白馬や少年少女が駆けるレモンイエローの画面には、祝祭的な幻想世界が隅々まで広がり、作家の新たな展開を感じさせる。レモンの産地・広島での今回の凱旋展では、その詩情溢れる絵画の中に、広田の原風景のようなものも見ることができるかもしれない。
■広田稔展 -しぶや美術館- 6月1日(水)〜8月7日(日)
レモンの森やバレエをはじめ、東北や北陸を取材した作品、昨年出版した『人物クロッキーの基本』(ホビージャパン)の掲載原画など約40点を展示。
【会場】しぶや美術館(広島県福山市本町8-27)
【TEL】084-925-2113
【休館】月・火曜 ※7月18日(月・祝)は開館
【料金】高校生以上300円(200円) 中学生以下、友の会会員は無料
※土曜日は高校生入館無料
■広田稔展 -福山天満屋 6階 美術画廊- 6月29日(水)〜7月4日(月)
バレエやレモンの森の代表的なシリーズに加え、近年始めた日本各地を取材した風景画、パステルによる人物クロッキーなど新作約40点を展観。
【会場】福山天満屋6階美術画廊(広島県福山市元町1-1)
【TEL】084-927-2111(代表)
【休廊】会期中無休
【料金】無料
■二人の稔展 -本住寺- 7月1日(金)〜7月9日(土)
写真家久保田稔氏との2人展。「本能寺のD」知立公演での大作や、モロッコ、中国、インドなどの旅日記シリーズを中心に展示。
【会場】本住寺(広島県福山市新市町新市1126)
【TEL】0847-51-3044
【休場】会期中無休
【料金】無料
■広田稔展 -広島三越 7階 美術画廊- 7月26日(火)〜7月31日(日)
バレエ、レモンの森のシリーズと鉛筆による人物クロッキーを中心に展示。
【会場】広島三越 7階美術画廊(広島県広島市中区胡町5-1)
【TEL】082-242-3111(代表)
【休廊】会期中無休
【料金】無料
【関連リンク】広田稔ホームページ