独自の展開見せたベルギー近代美術
ベルギーは、ヨーロッパの、フランス、ドイツ、オランダなどと国境を接し「ヨーロッパの十字路」と呼ばれている。
美術については、古くは15~16世紀に、写実の粋を極めたファン・エイク兄弟や、幻想的なボッスやブリューゲルが活躍し、17世紀にはバロックのルーベンスを輩出した。こうした伝統を継承しながら、近代期にはベルギーの美術はフランスの影響を受けながら、独自の展開をみせる。
1830年にベルギーという国家として独立した後に、同国は目覚しい経済発展を遂げる。しかしその裏では、過酷な境遇を強いられる労働者の問題を生んだ。そのような中で、フランスのクールベに影響を受け、「レアリスム」が興隆し、坑夫の画家・彫刻家と呼ばれるコンスタンタン・ムーニエのような作家が活躍した。
フランスの印象派もベルギーにもたらされ、エミール・クラウスは強い光の表現を探求し、「ルミニスム」と呼ばれるベルギー独自の印象派を確立した。
西洋近代文明の主知主義への反動として、より精神的なものを求める傾向も生まれる。フランスの象徴主義文学がベルギーにももたらされ、神秘的な女性像を数多く描いたフェルナン・クノップフを筆頭に、象徴派の美術が開花する。
精神的なものの追求は、画家の心の内を激しい筆致で表出する「表現主義」誕生にもつながっていく。ジェームズ・アンソールの、毒々しい光と激しい筆致は、ベルギーの表現主義の先駆となった。
第一次世界大戦を経て20世紀に突入すると、フランスで生まれた「シュルレアリスム」はベルギーでも受容され、ポール・デルヴォーやルネ・マグリットといった、日本でも人気の画家たちが活躍した。
ベルギー美術は、自国の伝統に、ヨーロッパの他国からの影響を取り入れることで、複雑で豊かな独自の展開を示した。今年は、日本とベルギーの国交が樹立してから150周年の年にあたる。ぜひ展覧会をご覧頂き、ベルギー近代美術の精華を楽しんで頂きたい。(姫路市立美術館学芸員)
【会期】2016年7月2日(土)~8月25日(木)
【会場】姫路市立美術館(兵庫県姫路市本町68-25)
【TEL】079-222-2288
【休館】月曜(ただし7月18日は開館)、7月19日(火)
【開館】10:00~17:00(入場は16:30まで)
【料金】一般800円 高校・大学生500円 小・中学生200円
【関連リンク】姫路市立美術館