アート・ドキュメンテーション学会(前田富士男会長)が主催する「野上紘子記念アート・ドキュメンテーション学会賞・推進賞」。第10回の学会賞は豊川斎赫氏に、推進賞はリアス・アーク美術館にそれぞれ決定した。
2007年に創設された本賞は、アート・ドキュメンテーションに関する優れた研究および実践について顕彰することを目的としている。今回選考委員長を務めたのは、慶應義塾大学名誉教授の鷲見洋一氏。授賞式は6月11日に奈良国立博物館で行われた。
豊川斎赫氏は現在国立小山工業高等専門学校建築学科准教授。建築家・丹下健三について刊行した2冊の書物の、対照的なアプローチが評価された。インタビュー集『丹下健三とKENZO TANGE』(2013 年)では、丹下の弟子や協力者49名にインタビューするという「オーラル・ヒストリー」の方法を採用。一方『TANGE BY TANGE 1949-1959 /丹下健三が見た丹下健三』(2015 年)は、丹下が建築物を中心とするさまざまな被写体を撮影したフィルムを選んで構成し、独自のドキュメンテーション・ワークをみせた。
推進賞はリアス・アーク美術館(宮城県気仙沼市)の「東日本大震災の被災生活者の観点にたつ調査記録作業とその展示活動」 に対して贈られた。同館は東日本大震災の直後より、気仙沼市と南三陸町における被災状況の調査・記録を開始し、被災現場撮影画像約30,000点ほか厖大な資料を約2年間にわたって蓄積。「被災者による被災者のための表現」という独自の立場から作業に取り組んだ。その活動成果は、2013年4月からの同館内の常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」、および国内巡回展と同展カタログで示された。
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