「国際ガラス展・金沢2016」の大賞に、広垣彩子(ひろがき・あやこ)の《Ambiguity》が選ばれた。
同展は、石川県、金沢市、金沢商工会議所、(公財)石川県デザインセンターで構成された国際ガラス展・金沢開催委員会が主催する世界唯一のガラスの国際公募展。日本を代表する伝統的都市のひとつである金沢に、ガラスという新しい芸術文化を育てるとともに、他の工芸や産業分野に対して創造性を触発していくことも期待して3年に1度開催されてきたもので、「世界のガラス・シーンの今を展望する」展示会として国内外で評価を得ている。
13回目の開催となる今展には40カ国より374点が集結。武田厚(審査員長・多摩美術大学客員教授、美術評論家)、ボーディル・ブスク・ラーセン(ガラス評論家)、ヤン・ゾリチャック(ガラス造形家)、ウィリアム・ダグラス・カールソン(ガラス造形家、マイアミ大学芸術学名誉教授)、藤田潤(ガラス造形家、日本ガラス工芸協会理事)の各氏が審査を行い、各賞を決定した。
大賞の広垣彩子は、東京ガラス工芸研究所と富山ガラス造形研究所で学び、現在は神奈川在住。賞金は100万円。そのほか金賞には藤掛幸智《Vestige》、銀賞には藤原寛太朗《古道》、WIETH Ida《Both Sides Now》、塚田美登里《Natural Lace》、津守秀憲《存在の痕跡》が選ばれている。
[寄稿]現代ガラスの今―日本の若手の台頭:武田厚
この「国際ガラス展・金沢」の歴史は30年を超えている。つまり30余年の世界のガラスシーンを見てきた展覧会だと云ってもいい。
国際と名の付くガラスのコンクールが他にもなくはなかったが、30年も続けて世界に応募を呼びかけ、授賞等で顕彰事業を続けてきたのは、確かにこの「国際ガラス展・金沢」だけなのである。今の平穏な時代のガラス界にとって、かけがえのない刺激の一つとなっていることを思うと、いつかそれが起爆剤となって、現代ガラスの新時代がまたやってきて欲しいと願わずにいられない。
ファイナル審査はいつものように欧米から3名、日本から2名の計5人の審査員で行われた。デイスカッションが中心の審査だったので、辛辣な意見交換というか積極的な話し合いというか、実に興味深く有益な審査となった。結果は17ある賞の内の12の賞が日本人の作品に与えられた。しかもグランプリ=大賞はじめ上位の賞のほとんどを日本の作品が占めてしまった。審査員、とりわけ欧米の審査員は半ばあきれ諦める、といった感じだった。特に日本の若手作家の作品の明快な独創性とクォリティの高さを彼らは絶賛していた。無論掛け値なしのコメントである。
その代表格と云えるのが大賞受賞の広垣彩子(31歳)《Ambiguity》であった。全身を数千本の極細のガラス棒で包まれた得体の知れない未確認生物のようなもので、その色調、表情、触感覚などのすべてにおいてミステリアスな作品であった。
(美術評論家、審査員長)
【展覧会】国際ガラス展・金沢2016
【会期】2016年10月19日(水)~31日(月)
【会場】石川県政記念しいのき迎賓館(石川県金沢市広坂2-1-1)
【TEL】076-261-1111
【巡回】2016年11月26日(土)~2017年1月29日(日)石川県能登島ガラス美術館
【関連リンク】公益財団法人 石川県デザインセンター