豊穣で多様な江戸文化の粋
7月30日(土)から新潟に巡回する徳川家康没後400年記念「天下太平 徳川名宝展」は、家康の生涯や人となりを伝える遺品をはじめ、将軍家・御三家・ゆかりの寺社、二条城などに伝来した国宝2点・重文17点や初公開の刀剣を含む、約100点の名宝が一堂に会す、関東甲信越で初めての展覧会である。
「徳川家康」「葵の系譜」「太平の世」の3章により構成される本展では、没後400年を記念し、家康の一生と彼が礎を築いた太平の世のもとで武家・公家・町人らが共存し、豊かな成熟をみた江戸時代の日本―「徳川の平和」(パックス・トクガワーナ)を振り返る。
三河の一城主の後継者として生まれ、幼くして父を失い、人質生活を送った徳川家康(1542~1616)は、逆境をバネに、忠義の家臣団に支えられ、150年近く続いた戦乱を終結させた。
他方、家康は統治における学問知識の有用性を深く認識し、書物を蒐集・刊行するとともに、前政権による朝鮮出兵の戦後処理をおこない東アジアとの関係を正常化させ、徳川将軍家が対外交渉において「日本国」を代表する環境を創出し、朝鮮との国交回復、中国との通商回復に成功した。
大坂夏の陣の勝利をへて1615年に「元和偃武」(げんなえんぶ)をかかげた徳川将軍は、その後、初代を神(東照大権現)として祀り、東照宮信仰を全国に広めた。
第1章では、400年の歳月を超えて受け継がれた貴重な歴史資料を通じて、列島社会に「太平」をもたらした人物の生涯と個性をたどる。
第2章では、家康遺品をはじめ、「東照大権現像」、太平の世に贅を尽くして調えられた華やかな婚礼道具「国宝 初音の調度」などから、武家文化の粋を紹介する。
第3章では、幕府御用絵師狩野探幽と市井に生きた英一蝶、二人を展示構成の柱に、大規模御殿障壁画にみる将軍の威光の演出と都市住民の姿を活写した絵画表現とを対比し、太平の世の美術の豊饒さ、多様さを検証する。
今日私たちが「日本的」と考える美意識や文化は、250余年の平和が続いた江戸時代に形成された。徳川家康が希求した「天下太平」のもとで育まれた日本人の共生・共助のこころは、紛争や緊張の絶えることのない21世紀を生きるヒントになるかもしれない。
(公益財団法人德川記念財団学芸部長)
【会期】2016年7月30日(土)~9月25日(日)
【会場】新潟市美術館(新潟市中央区西大畑町5191-9)
【TEL】025―223―1622
【休館】月曜、ただし8月1日(月)、15日(月)、9月19日(月・祝)開館
【開館】9:30~18:00(観覧券の販売は17:30まで)
【料金】一般1200円 大・高校生1000円 中学生以下無料
【関連リンク】新潟市美術館
■美術講座「江戸のモダニズム」
【日時】9月10日(土) 14:00~
【講師】藤井素彦(新潟市美術館学芸員)
【会場】新潟市美術館講堂
【料金】無料 ※事前申込不要