日油の超低反射フィルム「AirLike®」、その効果を画商はどう見るか――

2016年09月02日 14:47 カテゴリ:最新のニュース

 

 

“バイオから宇宙まで”幅広い事業を展開する化学メーカー・日油株式会社(本社・東京都渋谷区)。同社事業の一端を担うディスプレイ材料事業において近年、「反射防止フィルム」が好調のようである。同社の反射防止フィルムには標準グレードの「ReaLook®(リアルック®)」と高性能グレードの超低反射フィルム「AirLike®(エアライク®)」があるが、特に昨年2月にリリースした「AirLike®」は、光の反射率を0.1%にまで抑制することで映り込み等を防ぎ、よりよく作品の魅力を伝えられるとして、各地の美術館・博物館でも導入が進められている。

 

編集部ではこれまで2回にわたって、同製品の機能や導入館の声を紹介してきたが、今回はさらに画廊・ギャラリーにおける反射防止フィルム普及の可能性を探るべく取材を実施。椿近代画廊の椿原憲氏、永井画廊の永井龍之介氏、至峰堂画廊の鈴木庸平氏に、「AirLike®」を使用した額装作品、使用していない額装作品を比較してもらい、感想を聞いた。

 

 

 

「具体」の吉原治良、白髪一雄から天野裕夫、原大介ら現代作家までを扱う椿近代画廊は、東京・日本橋の一角の地下に広大なギャラリースペースを有する。一面にある窓から日の光が差し込むこの空間では「日光によって作品が見え辛いと言われることもある」と椿原氏は語る。「照明や日光の反射による見え辛さが解消されるのは有り難い。優れものだなという印象です。うちでは額縁と同じく、作品の5面を覆うアクリルケースをよく使いますが、ケースの場合はフィルムタイプの方が使いやすいかもしれませんね」。

 

「比べて見ると、すぐ分かる」と椿原氏

 

フィルムが持つ機能の中でも椿原氏が特に注目したのは、UVカット機能。「AirLike®」を使用すれば半永久的に紫外線を遮断することが出来る。「油絵は意外と丈夫ですが、日本画や版画なんかは日に焼けて退色してしまいます。お客様には大事な作品ならば、飾らずにしまって置くようにと笑い話で言うのですが、それが防げるとあれば、利用価値は非常に高いと思います」。

 

 

「直島の地中美術館をはじめ近年は無反射ガラスを導入している美術館も多いですが、非常に高コスト。同様の効果を得られてコストも抑えられるならば、それは大きな強みだと思います」と話すのは永井画廊の永井龍之介氏。テレビ東京『開運!なんでも鑑定団』のレギュラー鑑定士としても知られる永井氏は、この春、銀座4丁目から赤坂に画廊を移転し「新しい画廊のあり方をこれから探っていく」という(→関連記事はこちら)。

 

永井氏は超低反射フィルムは無反射ガラスとの「コスト勝負」になるだろうと語る

 

2011年には軽井沢千住博美術館の開設にも協力しているが、「自然光で見せたいという千住先生の意向があって、あの美術館では全作品額装をせずに展示をしています。建物自体も西沢立衛氏によるガラスを多用した明るく開放的な建物となっています。もちろん、UVカットガラスを使用していますが、作品の保護という意味ではリスクがあります。同館の場合は、何かあった場合は千住先生が対応して下さると仰っていますが、物故作家の作品が多い美術館などは、こうした製品の需要は高いでしょう」。

 

 

一方、既に反射防止フィルムを使用しているというのは銀座の至峰堂画廊。大阪と東京に2店舗を持つ同画廊は、明治・昭和の巨匠から現代作家まで洋画を中心に取り扱っている。「うちではReaLook®を使用しています。お客様からの評判も良いですね。ただ、私たちはフィルムが既に貼りつけられたアクリルやガラスを購入していまして、これがなかなか高くてネックになっています。額縁によって使用するアクリルの厚みも変わったりしますので、探すのにも苦労するんですよ」という鈴木氏は「自分たちで貼ることが出来るのか」が重要だと語る。「価格にもよりますが、貼り替えがきくようになれば格段に使用機会は増えるでしょう。今は美術館に作品を貸し出す場合も、反射防止かどうかは必ず確認されます。今後はそれこそ当たり前になっていくでしょうね」。

 

既に反射防止フィルムを使っている鈴木氏も「AirLike®」の効果に興味を示す

 

どうやら「反射防止」へのニーズは、美術館のみならず、画商や画家、コレクターの間でも高まっているようだ。現状、「AirLike®」の施工は専門の職人が行っているためにコスト面で課題が残るが、同社が研究を進めているという貼り直し可能なフィルムが製品化すれば、これから更なる広がりを見せることだろう。技術の進歩によって、私たちの鑑賞体験は気付かないうちにより快適に、より豊かになっている。美術館や博物館においてはあくまでも作品が主役である。しかし、ときにこうした美術を支える仕事に目を向けてみると、新たな発見があるかもしれない。

 

商品に関する問合せは日油株式会社 ディスプレイ材料事業部 営業部 西脇氏まで(TEL:03-5795-3909)。

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日油株式会社 ディスプレイ材料事業部
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