今井家三代4人の作品が一堂に―陶藝家・今井政之三代展開催

2016年09月13日 16:04 カテゴリ:最新のニュース

 

日本藝術院会員、文化功労者である陶芸家の今井政之(1930年大阪府生まれ、日展顧問 ※今井の「今」は異体字、中は「ラ」でなく「テ」)。この度、2人の息子、そして孫、三世代4人による合同展覧会が「あべのハルカス近鉄本店 美術画廊」で開催される。

 

政之氏は、陶の世界における象嵌技法の第一人者であり、国内外で高い評価を受けている。今展では、その父と同じく陶芸家である長男眞正氏、「金石造形」という新分野を開拓した次男裕之氏、そして祖父、父、叔父と同じ東京藝術大学に進学、一昨年大学院を修了し、陶芸家の道を歩み出した孫・完眞氏の作品が一堂に介す。

 

政之氏は、たびたびモチーフとしている海の幸、野に咲く花々、小さな虫たちなどの造形的特徴をダイナミックに器に写しとり、作品に昇華させていることで知られている。《備前象嵌 五色海老 大壺》は、海からあがったばかりの海老の生々しい色合いや力強さを見事に表現している逸品だろう。《青備前象嵌 翡翠 水指》は、一見木にとまって休んでいるようにも見える鳥だが、その眼差しは川面のエサをするどく狙っているかのようにも見える。こうした躍動感を伝える造形の完成度は氏独自のものであろう。

 

今井政之 左:《備前象嵌 五色海老 大壺》 右:《青備前象嵌 翡翠 水指》

 

長男の眞正氏(1961年京都府生まれ、京都工芸美術作家協会副理事長)のモチーフは動物だ。《丹頂鶴 祭器》では、鶴の希少性と、祭祀で使う器という神秘性がうまく合致し、崇高な印象を与えるのに成功している。一方、《深山景 ―梟―》では、梟のとぼけた愛嬌やおおらかさが伝わってくる。その眼差しの温かさからは、シンパシーをもって対象物と対峙している作者の姿勢が伝わってくる。

 

今井眞正 左:《丹頂鶴 祭器》 右:《深山景 -梟-》

 

次男の裕之氏(1964年京都府生まれ、京都工芸美術作家協会理事)は、水晶や方眼石、蛍石をつかい、独自の世界観を自由に広げている。例えば《Time traveler》は、銅、金箔、三葉虫、木を使い、見る者の心を揺さぶるし、《モモちゃん 見付勾玉》《アオくん 勾玉》《ミドリちゃん 勾玉》も同様に、そのフォルム、タイトルともに独特な存在感を放つ。こうした多面性を喚起させるのが作者の思惑なのかもしれない。

 

今井裕之 左:《Time traveler》 右:《モモちゃん 耳付勾玉》《アオくん 勾玉》《ミドリちゃん 勾玉》

 

孫の完眞氏(1989年京都府生まれ)のリアリズムを追求する作品からは、1つの枠には収まらない意気込みが伝わってくるようだ。白一色で表現した《渡蟹》では表現力に多重的な広がりを見せ、《聖護院蕪》では、生まれ育った京都の野菜を素直にのびのびと表現している。

 

今井完眞 左:《渡蟹》 右:《聖護院蕪》

 

こうして4人の作品を見ると、見事に個性が分かれ、独自の世界観を真っ直ぐに突き進む有様が伝わってくるようにも思える。4者4様、それぞれの主張を作品を通し、闘わせているのを楽しむ機会ともなろう。

 

【展覧会】―伝承と創造― 陶藝家 今井政之三代展
【会期】2016年9月14日(水)~20日(火)
【会場】あべのハルカス近鉄本店 タワー館11階 美術画廊(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43)
【TEL】06-6624-1111(代)
【営業時間】10:00~20:00(※最終日は17:00閉場)
【料金】無料

 


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