まばゆいばかりのインド宝飾文化 : 東容子
本展覧会は、カタールのシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アル・サーニ殿下が蒐集されたインド宝石コレクションから、181点もの名品を選りすぐり、豊かに宝石を産出する国インドにおいて、16世紀から現代まで宝飾品がどのような軌跡を辿ったかを展観する。
16世紀に始まるムガール帝国は、かのタージ・マハルを建造した国である。四代皇帝ジャハーンギールと五代皇帝シャー・ジャハーンは、当時の世界でトップクラスの富を持ち、国の支配者であるとともに、文化・芸術に秀でた一流の教養人でもあった。彼らはインドのみならず、中国、ペルシアや、遠くヨーロッパの芸術を親しく取り入れて宝飾品を作らせた。翡翠や水晶に美しい彫刻を施し、黄金製の器の表面にダイヤモンド、ルビー、エメラルド、真珠などを散りばめた豪奢な調度品や、大粒の宝石をいくつも使った華麗な装身具で身の回りを煌びやかに飾った。
特にダイヤモンドは18世紀まではインドが唯一の産出国であり、本展でも世界最大のカット・ブルーダイヤモンド〝アイドルズ・アイ〟や、かつて英王室に献上された〝アルコットⅡ〟などの名ダイヤモンドが展示される。
やがてムガール帝国が衰退し、イギリスの支配が強まると、インド国内で一定の自治を認められたマハラジャと呼ばれる各藩の王族たちは、ヨーロッパのジュエリーメーカーに競って注文を出すようになった。アールデコと呼ばれたこの時代以降、インドとヨーロッパの文化がクロスオーバーした新しい宝飾品が続々と生み出され、その流れはより洗練されて現代に至るのである。
本展では、ニューヨークのメトロポリタン美術館(2014・10/28―2015・1/25)、ロンドンのビクトリア&アルバート美術館(2015・11/21―2016・4/10)で開催された展覧会に更なる名品を加え、まばゆいばかりのインド宝石コレクションが日本初公開となる。
また、MIHOコレクションから、江戸時代の陶工尾形乾山のやきもの約60件を、乾山の器に四季折々の料理を盛りつけた美しい写真とともに展示する「美し(うまし うるはし) 乾山 四季彩菜」が同時開催される。
(MIHO MUSEUM学芸員)
【展覧会】ムガール皇帝とマハラジャの宝石 カタール・アル サーニ・コレクション
【同時開催】美し(うまし うるはし) 乾山 四季彩菜
【会期】2016年10月1日(土)~12月11日(日)
【会場】MIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300)
【TEL】0748―82―3411
【休館】月曜、祝日のとき翌平日
【開館】10:00~17:00(入館は16:00まで)
【料金】一般1100円 高・大生800円 小・中生300円
■ミュージアム・フェスタ
館内各所で美術品にちなんだ「寸劇」や、ホールで「ストーリーテリング」、解説ツアーなどを開催。
日時:2016年10月30日(日)11:00~16:00
■講演会「ジュエリーに永遠の美を求めて」
講師:有川一三氏(アルビオン アート(株)代表取締役、東京藝術大学非常勤講師)
日時:2016年11月6日(日)14:00~15:30
料金:参加無料(要入館料)、予約不要
【関連リンク】MIHO MUSEUM
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