新潟・十日町の美しいブナ林に囲まれた「星と森の詩美術館」の開館20周年記念展として、彫刻家・藤巻秀正(1937年新潟県生まれ、二科会評議員)の個展が開催中である。
同館は株式会社 丸山工務所の社会事業の一環として、96年10月に開館。藤巻をはじめ、20余年の創作活動で約400点の作品を制作した版画家・星襄一(1913~1979)や現代日本刀剣界の最高賞である「正宗賞」を3度受賞した人間国宝・天田昭次(1927~2013)ら、郷土にゆかりの深い作家の作品を収蔵、展示する。駐車場から池を廻って美術館建物へと続く野外彫刻プロムナードには、21点の藤巻作品が設置されており、自然に溶け込むような牧歌的な世界観が同館のシンボルとなっている。
藤巻は多摩美術大学在学中の59年、第44回二科展に初出品初入選。同大学卒業後は新潟で教職に就き、二科展、新潟県美術展を中心に国内外で発表を続けてきた。これまで71年の第10回全国県展選抜展で文部大臣賞、90年の第3回ロダン大賞展で美ヶ原高原美術館賞、同4回展で彫刻の森美術館賞、2013年の第98回二科展で文部科学大臣賞を受賞。国内外で数多くのモニュメントも手掛けている。
80年代後半からは、「自然と人間の共存」をテーマとする「森」シリーズを手掛けてきた。ブナやナラなど広葉樹の葉とともに木の精が舞い飛ぶような、柔らかく愛らしい造形を通じて自然への讃歌を謳う同シリーズであったが、近年は森の“悲鳴”が聞こえてくるような鋭い造形も発表している。「自然に包まれて私たちは生きてきたはずですが、再開発による樹木の乱獲などによって自然のバランスが崩れてきている。自然をもっと大事にしてほしい、自然にもっと目を向けてほしいという想いが、針葉樹を思わせるこの鋭角的な造形につながりました」。
今展では、今夏同館で開催した「木彫アートキャンプ」で制作し、第101回二科展に出品した「森の精」をはじめ、近年の代表作に新作を加えた32点を展示。小展示室では、パリ留学時のレリーフや国内外モニュメントの試作品、マケットなども鑑賞することが出来る。ライフワークとして追求してきた「森」のシリーズが新たな姿を見せつつある。制作60年の節目にして、今後の活動にも期待をもたせる展覧会と言えよう。ぜひ足を運んでほしい。
【会期】2016年9月30日(金)~11月30日(水)
【会場】星と森の詩美術館(新潟県十日町市稲葉1099-1)
【TEL】025-752-7202
【休館】火曜
【営業時間】9:30~17:00(入館は16:30まで)
【料金】一般500円、中・小学生200円、未就学児無料
【関連リンク】星と森の詩美術館