半透明に色づくやわらかなメディウム―岡﨑乾二郎の新作個展が開催中

2016年11月15日 17:42 カテゴリ:最新のニュース

 

 

岡﨑乾二郎の新作絵画展が南麻布のTakuro Someya Contemporary Artで開催されている。

 

岡﨑は1955年東京生まれ。1982年のパリ・ビエンナーレ招聘以来、数多くの国際展に出品してきた。「灰塚アースワーク・プロジェクト」、「なかつくに公園」等のランドスケープ設計、グッゲンハイム美術館・サンフランシスコ近代美術館の「戦後日本の前衛美術—Scream Against The Sky」(1994〜1995年)、「ヴェネツィア・ビエンナーレ第8回建築展」(2002年、日本館ディレクター)、2007年には現代舞踊家トリシャ・ブラウンとのコラボレーションなど、つねに先鋭的な芸術活動を展開。東京都現代美術館(2009~2010年)における特集展示では1980年代の立体作品から最新の絵画まで俯瞰し、BankART1929「かたちの発語展」(2014年)では彫刻やタイルを中心に最新作を発表した。今年10月まで宮城・風の沢ミュージアムで開催された、おかざき乾じろ名義の個展『POST /UMUM=OCT /OPUS』では、「意識をもった機械と、人間の意識のゆくえ、そして作品のありよう」について触れたテキストを発表。人工知能が人類を越える2045年問題を前に、人や作品は機械の意識に促される形で「はるかに充実した無尽蔵の広がりをもつ物質」に目覚めるかもしれないと述べている。

 

岡﨑の試みは、対象についてただ形式を分析的に解いて見せるわけではなく、文学的で詩性を帯びて現すために、意識において対象の座標を明示的にすることで、自由自在で多様な象や彩りを生み出すかのような印象を与える。そうした意識は、絵画や彫刻をはじめとする作品に「美しさ」を与えるのと同様に、それまでに積み重ねられた制作や言説、思想の集合そのものに、社会の源泉となる資質を与える重要性も持つ。造形をルーツとしながらも、芸術の文化的波及のなかで知性と感性を発揮することを期待され、思想にも影響を及ぼしている戦後日本美術において唯一無二の作家であり、これからのアートを共時的なブームから通時的な事象へと定着させるために求められる存在といえる。

 

今展では新作の大型絵画3点を発表。半透明に色づいたやわらかな絵の具が画面のところどころをせめぎ合い、平面空間を無限に拡張してゆくようなその絵画に、岡﨑の思想の一部分が感じられるだろう。

 

ちなみに掲出作品のタイトルは以下(写真は大作の一部分)。
「松葉のどの一本も砂浜のどの砂も暗い森のどの霧も草地のどの草も、怒るときがある。泣くときがある。笑うときがある。羽音を唸らせるどの虫も(自らは体温を持たないが)シカ、ワシ、クマの体温が変化するのは分かる。古木が根こそぎ倒れ、松の節だらけの枝の背後で逆さまに滝が落ちるとき、厳寒の冬至の暗い森の中で、樫の巨木に生えたヤドリギが、ただそこだけ異なって、きらきらと新緑の葉を輝かしているとき、陽を照りかえし雪ぎの炎がもえている。」

 

 

【会期】2016年11月10日(木)~12月11日(日)

【会場】Takuro Someya Contemporary Art(東京都港区南麻布 3-9-11 パインコーストハイツ1F)

【TEL】03-6804-3018

【休廊】日・月曜・祝日 ※12月11日(日)は開廊

【開場】12:00~19:00

【料金】無料

 

【関連リンク】Takuro Someya Contemporary Art

 


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