タイ出身の映像作家・映画監督 アピチャッポン・ウィーラセタクンの、国内の公立美術館では初となる個展が東京都写真美術館(TOP)で開催されている。
アピチャッポンは1970年タイ・バンコク生まれ。既存の映画システムに属さずインディペンデントな制作を続け、2010年、長編映画『ブンミおじさんの森』でカンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)受賞。現代美術作家として映像インスタレーションにも取り組み、2012年にはチャイシリと協働で「ドクメンタ13」に出展した。昨年横浜美術館の「BODY/PLAY/POLITICS」展で作品が紹介されたことも記憶に新しい。
写真やフィルム、ヴィデオ、インスタレーション、長編映画など多岐にわたる方法で、淡々とした日常のなかから人間の深淵を浮かび上がらせていく一方で、タイの現代社会に関わる移民や格差、政治などの社会問題にも密接に関わってきたアピチャッポン。タイの東北地方を舞台に、伝説や民話、個人的な森の記憶や夢などを題材にした作品の数々は、静謐で叙情的だ。今展ではその作品の重要な要素でもある「目に見えない亡霊=Ghost」をキーワードに、これまで直接的に言及されることが少なかった社会的、政治的側面にも焦点をあてながら、彼の映像世界を同館のコレクションと作家蔵作品から紹介している。
展覧会図録では四方田犬彦や佐々木敦らの寄稿を収録。12月には飴屋法水、港千尋、キュンチョメらがテキストを寄せた書籍『アピチャッポン・ウィーラセタクン 光と記憶のアーティスト』(フィルムアート社)も刊行されているため、あわせてチェックしたい。2月11日からは「国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2017」で自身初となる舞台作品の上演も控えており、2017年も彼の作品に注目が集まりそうだ。
アピチャッポン・ウィーラセタクン 亡霊たち
【会期】2016年12月13日(火)~2017年1月29日(日)
【会場】東京都写真美術館 地下1階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
【TEL】03-3280-0099
【休館】月曜
【開館】10:00~18:00(木・金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
【料金】一般600円 学生500円 中高生・65歳以上400円
【関連リンク】東京都写真美術館